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ボリショイ秘史:帝政期から現代までのロシア・バレエのあらすじと感想

ボリショイ秘史




世界中のファンから愛されているボリショイ・バレエ団、その舞台裏や波乱万丈な歴史をご存知でしょうか?

「ボリショイ秘史 帝政期から現代までのロシア・バレエ」は、2021年4月に白水社から刊行されました。

著書のサイモン・モリソンさんはアメリカの名門私立大学プリンストンで大学教授として教壇に立ちつつ、過去の名作バレエの復元にも取り組んでいます。

1935年に旧ソ連の作曲家セルゲイ・プロコフィエフによって1度だけ上演された「ロミオとジュリエット」を、70年ぶりに再演したことで名高いです。

ボリショイという劇場がいかに複雑で込み入った存在なのか、どのようなダンサーやアーティストたちを輩出してきたのか。

ミキコ
500ページを越える本書の中で膨大な資料と綿密なリサーチをもとにして、鋭い考察を交えながら紐解いていきます。

■目次

ボリショイの始まり

 

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帝政ロシアの政治の中心地・クレムリンから歩いて10分程度離れた広々とした土地に、とある劇場がオープンしたのは1780年のことです。

もともとは軽業やショートコントなど、気軽に楽しめる演芸のためのホールとして始まったというのが意外ですね。

財政的にもゆとりはないためにアマチュアの劇団に所属する役者や、各地を旅して回る見せ物芸人たちを出演者として雇わなければなりません。

ロシア語のボリショイ(大きな存在)に名前負けしなくなったのは、ナポレオンによるモスクワ侵攻を撃退した1812年以降とも。

1853年に発生した大火災、1917年のロシア革命の勃発とともに暴徒化した市民による打ち壊し、第2次世界大戦下でのドイツ軍による爆撃。

それ以降も時代の荒波に晒されながらも21世紀までなんとか生き残って伝統を伝えてボリショイは、まさに芸術の砦でありバレエの守り神とも言えるでしょう。

2013年に起きたショッキングな事件


2013年にはボリショイ劇場バレエ団の芸術監督に3年前に就任したばかりの、セルゲイ・フィーリンが何者かに襲撃されるという衝撃的な事件が起こりました。

プリンシパル・ダンサーとして輝かしいキャリアを築いて「貴公子」とまで称えられてきたフィーリンですが、監督としては前途多難な船出になってしまいましたね。

  • オーディションや配役決定の際に多額の金銭を受け取っていた疑惑
  • モスクワ音楽劇場総裁との不仲説
  • クレムリンの官僚たちの関与

まで…サスペンス映画顔負けのスキャンダルの背景には、今なおバレエ界に理不尽な構造が残っているのかもしれません。

富裕層に生まれて将来を約束されている者、経済的な理由によって満足なレッスンを受けられずに去っていく者。

ミキコ
誰しもがその努力を認められて平等に評価されるシステム作りこそが、これからの自由で開かれたバレエの発展にも繋がっていくはずです。

偉大なバレエダンサー、マイヤ・ミハイロヴナ・プリセツカヤ


「ボリショイは我が家でもあり、命を持ったパートナー」という、20世紀ロシアの最も偉大なバレエダンサーのひとりであるマイヤ・ミハイロヴナ・プリセツカヤの言葉が感動的です。

アスリートにも匹敵する練習量で身体能力を極限まで高めつつ、演劇俳優からも表現力の指導を受けていたという努力には頭が下がりました。

チャイコフスキーの「白鳥の湖」を最も美しく情熱的に踊った功績の一方で、時の権力者や政治情勢に翻弄されたエピソードがほろ苦いですね。

父親はスターリンによる粛清の犠牲に、映画女優だった母親はカザフスタンへ強制送還。
プリセツカヤ自身もイギリス大使とのロマンスや、諜報機関からスパイの濡れ衣を掛けられたことも数知れません。

いろは
晩年は不遇のままで引退を余儀なくされたプリセツカヤですが、ボリショイの舞台に立つことこそが喜びでもあり生き甲斐でもあったのでしょう。

豊富な資料!どれも必見

1869年に初演された「ドン・キホーテ」のポスター、サイレント映画期に活躍した女優ヴェーラ・カラーリの白黒写真。

ボリショイ劇場とは切っても切れない人物に関する資料や、分かりやすい相関図が巻末には付録として付いていますよ。

現代バレエの発展だけにとどまらず、海外の文学や映像作品のインスパイアにも多大な貢献をしてきたことが伝わってきます。

現在レッスンに励んでいる皆さんはもちろん、バレエ鑑賞や劇場巡りがお好きな方も是非この本を読んでみてくださいね。



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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは、ミキコです。 小学1年生〜高校2年生までバレエを習っていました。 一旦はやめたものの20代半ばで再開し、今は週3回レッスンを受けています。 バレエの面白さをもっと知ってもらうために、このブログを書いています。