■目次
「ロミオとジュリエット」登場人物の紹介
モンタギュー家
- モンタギュー
- モンタギュー夫人
- ロミオ:モンタギューの一人息子
- ベンヴォーリオ:モンタギューの甥、ロミオのいとこ
- バルサザー:ロミオの従者
キャピュレット家
- キャピュレット
- キャピュレット夫人
- ジュリエット:キャピュレットの一人娘
- ティボルト:キャピュレット夫人の甥
- ジュリエットの乳母
その他
- エスカラス:ヴェローナの大公
- パリス:大公の親戚、貴族の青年
- マキューシオ:エスカラスの親戚、ロミオの友人
- ロレンス:修道僧
「ロミオとジュリエット」あらすじ
第1幕
舞台は14世紀のイタリアの都市ヴェローナ。
名家のモンタギュー家とキャピュレット家が抗争を繰り返していました。
そんな中、キャピュレット家で舞踏会が開かれることになり、 モンタギュー家の一人息子であるロミオは、一緒に仮面をつけて友人達とキャピュレット家のパーティに忍び込みます。
キャピュレット家の一人娘ジュリエットは、両親の勧める結婚相手・パリス伯爵と踊っていましたが、偶然にもロミオと視線がぶつかり、たちまち2人は恋に落ちてしまうのです。
仮面舞踏会のあと、ジュリエットへの気持ちが抑えきれないロミオは、キャピュレット家の果樹園に忍び込み、偶然にもジュリエットの部屋のバルコニーの下にたどり着きます。
そこで聞こえてきたジュリエットのひとり語り。
「ああロミオ。なぜあなたはロミオなの。」
自分の心を奪っていったロミオが、対立するモンタギュー家の一人息子であることを嘆くジュリエットの姿がありました。
ロミオはそんなジュリエットの前に姿を現し、二人は互いの思いを伝え合います。
第2幕
翌朝、神父のロレンス修道士のもとには、ジュリエットとの結婚を懇願するロミオの姿がありました。
モンタギュー家とキャピュレット家の和解を望むロレンス修道士は、この2人の結びつきが両家の和解をきっかけになると考えそれを了承します。
その後、ジュリエットと、証人となるジュリエットの乳母を呼び出し、ひそかに2人の結婚式 を挙げるのです。
日が高くなった頃、ロミオの親友であるマキューシオ、ベンヴォーリオらが、ジュリエットのいとこであるティボルトと出くわし、抗争に発展しそうな場面にロミオが遭遇します。
ティボルトから挑発を受けるも、彼は愛するジュリエットのいとこであるため、自制するロミオ。
しかし剣を抜いたマキューシオとティボルトとの斬切り合いの末、マキューシオは息絶えます。
それを見たロミオは激昂し、ついにティボルトを斬り殺してしまいました。
この騒ぎの中で、ヴェローナの大公エスカラスが現れ、ロミオの追放が決められます。
第3幕
親愛なる従兄弟の死と、心の通じ合った恋人の追放を嘆くジュリエット。
ロレンス修道士は、様子を見て二人の結婚を公表して両家の和解を勧めたのち、追放されたロミオを呼び戻そうと考えていました。
一方、ジュリエットの両親は、悲しみにくれるジュリエットに大公の親戚であるパリス伯爵と結婚するよう命じます。
もちろんジュリエットはそれを拒み続け、それに怒った父はジュリエットを勘当してしまうのです。
周りに事情も話せず孤立するジュリエットに助けを求められたロレンス修道士は、仮死の毒を使った策を考えます。
それは、一時的に仮死状態になる薬をジュリエットが飲み、周りに死んだと思わせて霊廟に葬られたあと、薬が切れて目覚めたところにロミオが迎えに来て二人でヴェロナから逃げるというものです。
パリス伯爵との結婚式前夜、ジュリエットはこの計画を実行し薬を飲みます。
従者からジュリエットが死んだと知らせを受け、彼女の霊廟に訪れるロミオ。
ジュリエットの墓を開けようとしたところでパリス公爵が現れ、斬り合いの末にパリスを殺してしまいます。
ロミオは、横たわっているジュリエットを死んでいると思い込み、その傍らで毒をあおって自ら死んでしまいました。
実はロレンス修道士はこの計画についてロミオに手紙を送っていたものの、検閲に止められてしまいロミオに伝わっていなかったのです。
ジュリエットが仮死状態から目を覚ましますが、息絶えたロミオの短剣で後を追って死んでしまいます。
修道士が一切の経緯を話し、真相を知り悲しみに暮れる両家は、手を差し伸べあい、ついに和解したのです。
「ロミオとジュリエット」見どころを解説
全体を通じて感じ取りたいのが、最初はあどけなさの残るジュリエットが、ロミオと出会うことで大人の女性へと変わっていく様子です。
ロミオと出会って恋を知り、互いの家の事情で気持ちのままに居られない悲しみを知り、短期間でひとりの女性へと成長していきます。
死んでまでロミオを追う一途さが痛ましいですね。
オススメの場面を1つずつ挙げるとキリがありませんが、キャストの豊かな表現力、技術力を存分に堪能してください。
「ロミオとジュリエット」パ・ド・ドゥを解説
いちばん有名なシーンといえば、二人がバルコニーで再会する場面ですよね。
バレエの演出では、「バルコニーのシーン」とも呼ばれる場面。
互いを愛おしそうに見つめあい、手を取り合って踊るシーンは他の物語にも見られますが、若いふたりが、それぞれの家柄の問題という現実を背負っていると考えながら見ると、なんとも言えない切なさを感じます。
また振り付けにもよりますが、ロミオがジュリエットを優しく抱き上げ上階に移し、名残惜しそうに別れを告げるシーンには心を打たれます。
「ロミオとジュリエット」公演の時間
上演時間は、第1幕〜3幕まで約2時間15分です。
公演を見に行かれる場合は、第1幕から3幕までのそれぞれの幕の間に休憩が入りますので、開演から約3時間程度です。
振付による違いを解説(ラヴロフスキー版、グリゴローヴィチ版、クランコ版、マクミラン版、プレルジョカージュ版、マイヨー版)
400年以上前にシェイクスピアによって初演されたと言われる「ロミオとジュリエット」。
バレエの初演は、1965年英国ロイヤルバレエ団によってでした。
これまでに様々な振付師が携わってきましたが、中でも有名な6名の振付師によるものを比較してみます。
ラヴロフスキー版
「ロミオとジュリエット」のドラマティック・バレエの「原典」と言われるのが、レオニード・ラヴロフスキー版です。
実は、プロコフィエフによる音楽や各シーンの構成自体は、この版から現在まで全く変わっていません。
ラヴロフスキー版を一言で表すと…
古典的・形式的な振り付けでマイム(セリフに代わる動作のこと)が多く、クラシカルな雰囲気で衣装もロシアっぽい、といえます。
振り付けにマイムが多いのはクラシック・バレエらしいですが、その意味を知らないと、何を表しているのか理解しづらいというのが難点。
場面が変わるごとに登場人物が去り、舞台が暗転するという様式美も重視されています。
1番の見せ場
パ・ド・ドゥ(Pas de deux:2人の踊り)であり、そこに到達するためにパ・ダクシオン(Pas d’action:物語の情景、筋を表す踊り)が使われているように感じますが、このパ・ダクシオンがストーリーの流れと融合されきっておらず、初めてこのような舞台に触れた方だと「いまどういう状況?」と思ってしまうかもしれません。
衣装
マントと靴が真っ赤だったり、黄色と水色の組み合わされたパッチワークのような特徴的な衣装だったりと、伝統的なバレエ衣装展を見に行ったときのことが思い出されました。
物語のラストもロシア的で、2人の若者の恋の悲劇だけで終わらせず、最後にモンタギュー家とキャピュレット家の両家が手を取り合い、和解を予感させるところまでしっかり描いています。
グリゴローヴィチ版
ラヴロフスキー版の対極といえるほどにマイムを極限まで減らし、ストーリーと登場人物の心情を踊りのみで展開する振付です。
シーンとシーンの切れ目がなく、幕全体がつながっているのが特徴です。
演劇的な振り付けや舞台装置も少なめなため、一見平面的な演出になりそうにも思えますが、群舞を広げたり一箇所に集めたりと、メリハリの効いた舞台の使い方をしています。
ジュリエットが毒を飲み亡くなったあとは、葬られるシーンは省かれており、この音楽がロミオの悲しむ感情に読み替えられています。
ついにロミオも服毒してしまいますが、ここでジュリエットが目を覚まし、ロミオに毒が回るまでの最期のパ・ド・ドゥを踊るのも特徴的です。
グリゴローヴィチ版は、最初から最期までとにかく踊って表現しています。
マイムを使いすぎるのも分かりづらいですが、全く無いのも真意が伝わらないので難しいところだと感じました。
クランコ版
シュツットガルトの上演した「ロミオとジュリエット」により、優れた演劇バレエのカンパニーとして有名になりました。
クラシカルなバレエの基本は踏襲しつつ、全体的に活気があり、現代的な演劇のような振り付けです。
人物の心情をパ・ダクシオンの部分で描くようになったのがクランコ以降であり、バレエの舞台における、「パ・ダクシオン」と「パ・ド・ドゥ」の役割が逆転したとも言われています。
劇中では、グリゴローヴィチ版の特徴であった、墓場でのパ・ド・ドゥはありませんが、一夜を共に過ごした2人が別れるシーンではリフト(踊りの中でロミオがジュリエットを高く持ち上げる)を使うことにより、別れを惜しむ心情を表しています。
物語のラストはロミオとジュリエットの死で、両家の和解は描かれません。
両家の対立よりも、あくまで2人の男女の物語に焦点を当てています。
マクミラン版
クランコの弟分で、英国ロイヤルバレエに代表されます。
古典的ではなく演劇的、しかしそれが過剰ではなく、自然体で心のある振り付けです。
前述したクランコを基本とした上でマクミランの手を加えているようにも感じられますが、似ているようで全く異なる点は、クランコが「男女の恋」に着目している一方、マクミランは「みじめに死を選んでしまう若者」に着目しているという点です。
マクミランは登場人物の感情を表す踊りを、「動」だけでなく「静」でも表現しています。
音楽に合わせて踊るだけでなく、例えばベッドに腰掛けて空を見つめているだけでも、その心が感じ取られるような気がするのです。
2人のパ・ド・ドゥでは、リフトを多用して表される、溢れんばかりの高揚感。
だからこそ、ジュリエットが服毒を決意するまでに見せる心の迷いや葛藤が強調されます。
更に、息絶えるロミオを見るやいなや自ら短剣を刺してしまうジュリエット。
瞬く間に起こるストーリー展開も最後まで見るものの心をつかみます。
マクミランはプロコフィエフの音楽すべてを余すことなく使い切り、悲劇を描ききったといえるでしょう。
プレルジョカージュ版
アンジュラン・プレルジョカージュは、読みによっては「プレリオチャイ」とも呼ばれます。
フランスのコンテンポラリー・ ダンスの振付家で、コンテンポラリーダンス特有の振り付けが特徴的です。
- 縛られた生活を強いられているジュリエットが、その場から走り去る→ジュリエットの裏切り
- ティボルトの顔を隠す→ティボルトが殺された
- ジュリエットの持つ布→布は仮死状態になる薬を表し、包まれると仮死状態、布を取ると仮死状態が解かれる
などがあります。
物語の内容にも特徴
前述した4つの作品では、キャピュレット家とモンタギュー家が敵対しているという関係性でしたが、このプレルジョカージュ版では、支配者と支配される側、という構図になっているのが特徴です。
支配者側がジュリエット、支配される側がロミオであり、身分の違う2人が恋に落ち、悲劇的な結末を迎えてしまう物語になっています。
階級社会が生んでしまう「人の格差」に着目することで、問題提起をするような内容です。
マイヨー版
ジャン=クリストフ・マイヨーはフランスの振付家で、彼を一躍有名にした「ロミオとジュリエット」は1996年に最初に演じられました。
古典的なバレエを基本に、新しい視点からの解釈や物語の読み直しを試みている先進的な人物と言われています。
舞台装置、衣装も特徴的
豪華な舞踏会会場や石造りの建物もなく、ちょとしたパネルや階段、低いスロープ程度です。
両家の人々も中世の豪華な衣装ではなくシンプルでシックな衣装にとどまり、あくまで敵味方の判別をするための色分けをしている程度のため、戦う際も手に剣を持つことはありません。
ジュリエットは長い髪を揺らして踊る可憐な姿とは対照的に、長身・短髪です。
これまでの振付と比べると「これが『ロミオとジュリエット』の舞台?」と思うほど削ぎ落とされ、独創的な舞台になっているのではないでしょうか。
ただ、マイヨーの振付は、むやみやたらに省略したわけではなく、「愛」と「死」という本質だけ残して抽象化しているように感じられ、洗練された印象を与えてくれるものです。
いつもと違うロミオとジュリエットを鑑賞したい時に、スパイスのように味わってみてください。
あなた自身でお気に入りの振付を見つけ、もっとバレエに親しんでくださいね。
音楽の魅力を解説
バレエではセリフが用いられない分、物語の背景や登場人物の心情、また登場人物のもつ性格やイメージを表現するために、音楽が使われます。
シェイクスピアの「ロメオとジュリエット」を題材としたバレエ音楽で最も有名なのは、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」です。
この曲自体は全体で2時間30分程もある大作で、コンサートなどで演奏されるものは組曲版が多いです。
管弦楽用の組曲は全20曲もありますが、組曲の各曲にタイトルがつけられており、表現されているシーンが分かりやすくなっており、これによりバレエも理解しやすくなっています。
ただし、プロコフィエフの組曲とバレエの曲順、曲名は一致していません。
わたしの好きなシーンをご紹介します。
- 第1組曲「ロメオとジュリエット」
- 第2組曲「モンタギュー家とキャピュレット家」
- 第2組曲「ジュリエットの墓の前のロメオ」
第1組曲「ロメオとジュリエット」
とても美しいです。
晩餐会のあと、バルコニーに佇むジュリエットをロミオが見つけ、2人が再会するシーン。
そこで流れるバイオリンとフルートの旋律は、それぞれロミオとジュリエットを表していると言われており、2人の心情を表現しているようで、高まった気持ちを感じ取れます。
第2組曲「モンタギュー家とキャピュレット家」
個人的に聴き応えがあると感じるのが、こちら。
様々なドラマやCMでも使用されており、ロミオとジュリエットの中で一番有名な曲ではないでしょうか。
軽快なリズムのように見えながらも、不協和音を一音ずつに分解して演奏しています。
モンタギュー家とキャピュレット家、両家の間に流れる重く不穏な空気が表されている曲です。
第2組曲「ジュリエットの墓の前のロメオ」
ロミオの悲痛な思いを表しています。
ヴェロナに駆けつけたロミオが、亡くなっているジュリエットを自分の腕に抱き上げ、自らもジュリエットと同じく死ぬことを決意するシーンです。
ロミオの切り裂かれるような心を表す主題の後、重々しい旋律へと次第に変わっていきますが、最後は何かふっきれたような、あきらめを示すような明るい和音へと転調し、静かに収束していきます。
「ロミオとジュリエット」衣装の特徴を解説
14世紀が舞台、さらに貴族階級の話なので、ロミオら若者はいわゆる王子様スタイル。
若く可憐なジュリレットは、胸の下を絞った、軽やかに空気をまとう柔らかいドレスです。
城を物語の舞台とする場面が多いため、大人たちは中世ヨーロッパらしい、富の証のように装飾された豪華な時代装束をまとっています。
「ロミオとジュリエット」のこと、たくさん知れたよ(*^^*)
映画で観たことあるよ。