映画「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」の感想




映画「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」は、2017年の7月1日に劇場公開されたスティーヴン・カンター監督によるドキュメンタリー映画です。

史上最年少でイギリスの伝統的なロイヤル・バレエ団の主演ダンサーとしてのポジションを勝ち得た、セルゲイ・ポールニンの異端児としての生きざまと知られざる孤独な素顔に迫っていく作品になります。

ポルーニンの繊細に揺れ動く心を見事に描ききった良質のドキュメンタリー


世界各国から愛された人気絶頂期における輝かしい栄光の軌跡が、美しさ溢れる音楽と映像によって再現されていました。

数多くのバレエ評論家やファンに衝撃を与えた2年後の退団の決断によって苦悩する様子や、破天荒な日常生活の風景もリアリティー溢れるタッチで浮かび上がっていきます。

セルゲイ本人や周りの関係者への膨大なインタビューを織り交ぜつつ、メディアが捉えることができなかった繊細に揺れ動く心の内面が印象深かったです。

天賦のセンスと身体能力に恵まれてハンサムなルックスを持ちながらも、次第に危うい綱渡りの道のりへと歩んでいく様子が浮き彫りになっていきます。

「ザ・ダンサー」という映画に登場するロイ・フラーや「愛と哀しみのボレロ」でお馴染みのルドルフ・ヌレエフなど、舞踏家に宿命付けられた孤独な定めについて考えさせられました。

この映画の主役であるポルーニンも愛する家族の期待を背負って母国のウクライナを旅立ち、ロンドンで現実に打ちのめされた後にモスクワへと向かい流れるように生きていきます。

ウクライナでの自由気ままで純真無垢な少年時代の風景描写と、抑圧的で重々しいムードが漂っているイギリスのロイヤルバレエ学校でのコントラストが鮮やかでした。

人並み外れたスキルやセンスが、かえって本人にとっては人生の呪縛となってしまうところが皮肉な味わいです。

かつて日本で活躍した武原はんや朝鮮半島の伝説的な黄真伊を始めとする、芸術界の権威や国家権力に真っ向から逆らってまで舞踏家としての生涯を駆け抜けていった歴史上の偉人たちの姿が思い浮かんできました。

今の時代からすると異質な存在や和を乱す者たちはあっさりと排除されてしまう、昔ながらの慣習と規範を重んじるバレエ界の変わることのない体質を感じました。

英国ロイヤル・バレエ団を電撃引退した真相に迫る


経済的な逆境にも屈することなく狭き門をくぐり抜けて世界最高峰のロイヤル・バレエ団の一員となりながらも、ある日突然にあっさりと脱退してしまったセルゲイの胸の内が語られていきます。

家族や友人たちへの綿密なリサーチから、徐々に意外な事実が明らかになっていきます。

バレエ団特有のしきたりに順応することが出来なかった不器用さと、ウクライナ出身というこの業界ではマイノリティと見なされるアイデンティティーの問題もあるようです。

故国で待つ父親と母親の過剰な期待感も、本人にとっては重荷となってしまったのかもしれません。

息子の成功のためには自らの生活を犠牲にしてまで、ただひたすらに献身し続けていく両親の姿には胸が痛みました。

簡単には振り払うことができないしがらみと、セルゲイの身体中に刻み込まれたタトゥーとの間に奇妙な繋がりや不思議な共通性がありました。

自分自身の体に肉体的な痛みを与えることによって、精神的な痛みを束の間でも忘れようとしていることを気付かされました。

パーティー三昧の怠惰な日々や違法な薬物へと溺れていく姿にも、享楽的なイメージはなく、むしろ自分自身に課した苦行のようにも思えてきました。

天性のダンサーとしてこの世に誕生したセルゲイ・ポールニンは、いつの時代に何処の国で生まれ育ったとしても踊り続けていくはずです。

幼い頃にバレエと出会って才能を伸ばしていった過去の中にも、偶然ではなく必然的な宿命が伝わってきました。

再び踊り始めたポルーニン

1度は華やかなステージの上を去りながらも、再び踊り始めることを決意する瞬間を上手く捉えていました。

YouTubeでの動画配信やSNSなど最先端のメディアを駆使して新しいタイプのダンサーとしての在り方を模索していくところに強かさが感じられます。

あらゆる束縛や古い価値観や考え方から解き放たれた瞬間にセルゲイが披露する、自由奔放で生き生きとしたダンスシーンには強く心を揺さぶられました。

ダンサーとしての表情だけではなく、ひとりの若者が人間としての生き方を苦しみながら追い求めていくところを捉えているこの作品に胸を打たれました。

ダンスやバレエに造詣の深い方ばかりではなく、幅広い世代の人たちに見て頂きたい映画です。



いろは
セルゲイ・ポルーニンってかっこいい…!
ミキコ
注目したいダンサーはたくさんいるわね。
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こんにちは、ミキコです。 小学1年生〜高校2年生までバレエを習っていました。 一旦はやめたものの20代半ばで再開し、今は週3回レッスンを受けています。 バレエの面白さをもっと知ってもらうために、このブログを書いています。