まずは「眠れる森の美女」の簡単な解説から、やはりお話の流れや背景は演技にも影響してきますからね。
元は「シャルル・ペロー」という人がかいたヨーロッパの古い民話です。
今回のテーマはそれにインスピレーションを得て「ピョートル・チャイコフスキー」が作曲した曲を基に作ったバレエ演目についてです。
「眠れる森の美女」は(チャイコフスキー)バレエ三大演目とも呼ばれています。
あとの二つは「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」ですね。
これらはバレエに興味がない人でも聞いたことがあるでしょう。
■目次
「眠れる森の美女」の簡単なあらすじ
「眠れる森の美女」はざっくりいうと呪いで眠りについた姫と王国が100年後、王子の姫へのキスで目覚めるというお話です。
それぞれのバレエ団の演出によって多少物語が変わることはあります。
その中で「眠れる森の美女」第1幕は16歳になったオーロラ姫が生誕祭に呼ばれず怒った精霊の呪いで四人の王子に求婚された後、眠りについてしまうというストーリーが演じられます。
そして「ローズアダージオ」とは求婚時の4人の王子たちとオーロラ姫の演技のことを指します。
アダージオ(アダージョ)とは「ゆったりとした」という音楽用語で、バレエでは男女の緩慢なダンスのことをいったりします。
ローズはそのまま、王子たちが求婚の時にオーロラ姫に渡す花のことですね。
ついでにバリエーションとはバレエでいうとソロでの演技のことを指します。
「ローズアダージオ」は、1番スキルが求められる演技
実はこの踊り、バレエの演目の中でも最も技術の要する演技だといわれています。
特にこの演目のヒロインであるオーロラ姫は第一幕という演目の出だしから高度な演技を要求されるのです。
もちろんそれを問題なく踊りきったあかつきには、そのまま勢いに乗ること間違いなしです。
この演技の花、最も注目されるところはオーロラ姫が4人の王子の手を連続でとるシーンでしょうか。
王子から花を受け取って次の王子が出てくるまでオーロラ姫役のバレリーナは片足を挙げたまま一人でバランスを取り続けなくてはなりません。
もちろんその間も優雅にふるまわなくてはいけません。
あまりにフラフラしてしまうと不格好ですし表情も大切です。
また4人の王子たちとの連携、呼吸も合わせなければいけません。
そのため技術だけでなく精神面も必要になるわけです。
だからこそこの演技は最も難しいといわれていて、観客はこの演技に注目して、また魅了されるのです。
この演技について「ローズアダージオが踊れないのはバレリーナとして失格」といった人もいます。
最も難しい演技に対して手厳しいかもしれませんが、それだけ演じる側にとっても目指す場所であり、愛されているということなのかもしれません。
なのでこの演技のバリエーションの踊り方のコツといっても簡単に踊れるようになるというような、そんなものはありません。
トップダンサーにさえ「調子のいい時でさえ失敗することがある」と言わしめる演技ですから、日々の練習あるのみですかね。
なのでここで解説するのは踊れるようになるコツではなくて、より上手く魅せるコツになります。
より上手く魅せるコツを解説します。
- 技術の高さ
- 表現力、見る人に伝わるような演技
一人で立ち続けるオーロラ姫に観客はハラハラドキドキして、成功したあかつきには称賛の拍手が鳴り響きます。
この技術に関して特にすごいといわれるのは「タマラ・ロホ」
タマラ・ロホのその一人で立ち続ける時間たるや他の追随を許しません。
ただこの演技に対してとある演出家が「このシーンは一人で立ち続ける優雅さとそれでも王子の支えが必要になる儚さと16歳の少女の可憐さが重要なのだから、この演技は演出としては間違っている」と言ったりしています。
バレエファンの中でもこの演技が素晴らしいという人もいれば、バレエは芸術なのだからバランスを競う競技になっているようで嫌という人もいるようです。
ではその演出についてはどうでしょう。
森下洋子のローズアダージオ
森下洋子さんの演技はバランスもさることながらその細やかさが魅力です。
例えばオーロラ姫が王子たちの手をとるシーン、ただ手を取るだけでなく少し顔を上げる仕草をしたり、手をとる際にそこを強調することで姫の王族としての威厳や気高さが見て取れるといいます。
またバランスの演技だけでなく、他の細かい仕草でもあまりテキパキとしたものではなく融和に姫の可憐さが表現されています。
まさにこのバリエーション「アダージオ」のゆったりとしたという意味にぴったりですね。
こういったようにそのバレエ団の演出によって、また見る人の感覚によって感じ方が違うものです。
それでもどちらにしても誰かしらかの心に感動を生んでいるのだと思います。
これで解説は終わりです。
見る側にとっても演じる側にとってもいいバレエを作っていきたいですね。