映画が誕生してから現在にいたるまで様々な題材を扱った作品が作られてきました。
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■目次
1948年、イギリスで製作された『赤い靴』はそのまれな例外の傑作
一世紀近く経った現在でもその芸術的香気は薄れず、バレエ好きでなくてもその華麗な踊りの素晴らしさにウットリとさせられます。
この2人は大戦後の疲弊したイギリス映画界において活躍した映画作家です。
ほかに『天国への階段』『黒水仙』といった名作を放っていますが、特に日本で好評を博したのがこの『赤い靴』。
戦後5年。日本では1950年にロードショー
日本公開は1950年3月、東京の有楽座でのロードショー
当時としては異例の全席指定でした(その頃はどこでも座れる自由席が当たり前だったのです)。
1950年といえば戦争が終わってまだ5年。
焼け跡がまだあちこちに残っていて、戦災孤児の姿も目につく頃です。
食料を統制物資とする食管制度によって闇市が繁栄し、都会に住む庶民は食べ物を手に入れるのにも必死でした。
戦後間もない中でも大ヒット!
この「赤い靴」はそんな中でも生活の余裕のある観客層を引きつけ、56日間で33万人を動員。
上映は毎回毎回ほぼ満席だったといいます(上映期間を延長しなかったのは外貨不足のためにプリントが足りず、有楽座でロードショーを続けると次に上映予定の地方映画館が困るからでした)。
この映画を見た女の子たちは熱狂し、都内にはバレエ教室が雨後の竹の子のように乱立しました。
カラー撮影の美しさが際立つ!
この映画の第一の素晴らしさは、何といってもそのカラー撮影の見事さ。
ドラマ部分のカメラももちろんですが、バレエ場面では人工的なカラー設計に当時の技術の粋を凝らし、ため息の出るような美しさを現出しています。
撮影監督はパウエル=プレスバーガー監督の「天国への階段」「黒水仙」も担当したジャック・カーディフ。
前作の「黒水仙」でアカデミー賞の撮影賞を受賞しましたが、この「赤い靴」でその名声を決定づけ、現在でも「映画史上最も美しいカラー撮影をしたキャメラマン」という評価を得ています。
「赤い靴」あらすじを紹介します。ネタバレあり。
ストーリーは、アンデルセンの同名童話に基づく
幼い頃からバレリーナを夢見てきた少女が団長に頼み込んでその一員となり、激しいレッスンに耐えてメキメキと上達していきます。
ところがプリマ・バレリーナが団長と喧嘩して退団してしまったため、まだ新人のヒロインがいきなり主役に――。
新作バレエは好評を博し、ヒロインは一躍スターに
団長は密かにヒロインに愛情を寄せていたのですが、彼女はバレエの作曲家と結ばれることに。
そして結婚のために一旦はバレエ界を引退したものの、団長に頼まれて復帰を考えます。
しかし夫がそれに反対することから悲劇が起こります……。
このストーリーそのものはありふれたもので、この映画ではあまり重要ではありません。
「赤い靴」が映画史に残る名作となったワケは?
劇中でヒロインが踊るバレエナンバー(映画タイトルと同じ「赤い靴」)のおかげです。
その長さは13分。
ショットの数は134にものぼります。
ここでパウエル=プレスバーガー監督は特撮を駆使し、撮影監督によるライティングのサポートによって息を呑ませるような幻想的なバレエシーンを見せています。
アンデルセンの童話通り、ヒロインは疲れ切っているのに履いている赤い靴のせいで踊るのをやめることができません。
最初は舞台らしきところで踊っていたのに、靴の命じるままに街に出て、野を越え山を越え、様々な相手と踊り続ける羽目に。
特に新聞紙が人のような形となってヒロインと踊る場面は圧巻です。
「赤い靴 デジタルリマスター・エディション」も発売中!
この映画はバレエファンだけでなく映画監督たちも魅了し続け、
- 「タクシードライバー」
- 「レイジング・ブル」
- 「沈黙」
などで知られるマーティン・スコセッシ監督はわざわざこの映画をデジタルリマスターし、そのオリジナルの色彩を蘇らせています。
現在、そのバージョンがブルーレイとなっているので、その圧倒的なバレエナンバーの美しさをたっぷり堪能できます。
バレエ好きなら絶対に見逃せない名作をぜひ美しい画面で鑑賞してくださいね。
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本ページの情報は2021年3月時点のものです。
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