ドゥダダンシン(槇村さとる)のあらすじと感想【ネタバレあり】




バレエ漫画ときいて、まず何を連想するでしょう?

天才的な才能を持つ主人公?
逆境にもめげずストイックに道を極める孤高のプリマ?

この「ドゥ ダ ダンシン」という作品は、それらのイメージを良い意味で覆してくれる漫画です。

小さい頃から槇村さとるの漫画を読んで育ったわたし。
別冊マーガレット時代から現在まで、ほとんどの作品は網羅しています。

わたし自身がバレエを習っていることもあり、中でもダンスやスケートを扱った作品が特に好きで、初めて読んで衝撃を受けたのが「ダンシングゼネレーション」でした。

次に好きだったのがアイスダンスをモチーフにした「白のファルーカ」。
この作品の影響を受けて、大人になってからフラメンコを始めてしまいました。

槇村氏もダンスが好きだということで、ダンスやスケートを扱った作品は特に熱が入っているように思います。

その集大成と言えるのが「ドゥ ダ ダンシン」なのではないでしょうか。

ドゥダダンシンのあらすじを最初からヴェネチア国際編までサクッと説明

槇村氏の作品は心に傷と強さを持った女性が主人公であることが多く、仕事や踊り、周囲の人の愛で成長していくというストーリーです。

本作品の主人公、鯛子も幼い頃は将来を嘱望されたバレリーナだったにもかかわらず、コンクールの準備中に母親を亡くし、その罪悪感からバレエを愛しながらも100%の情熱を傾けられずにいます。

母親を亡くしてはいても家族や地元の友人の強い愛に支えられています。

特に魚屋のお父ちゃんがものすごく良いキャラなんですよね。
愛情深くて、ときどき心理を語る。

そんな彼女の前に現れたのが一流バレリーナの三上朗とプリマの倉田真理。

倉田真理、いかにも高飛車で人を見下したお姫様なんだけど、後に大変な努力家だということがわかり、人間味も出てきて結構好きなキャラクターです。

やっぱりバレエの世界でトップに立つということはあらゆることを犠牲にし、それを犠牲と思わないことが大事なんだなと思わされます。

三上朗は王子様。
鯛子がバレエへの情熱を思い出すのを手助けします。

そうして所属バレエ団で大役をこなした鯛子は新たな気持ちでバレエに取り組むのでした。

所属団の次の作品は王道「白鳥の湖」。

オデットは所属バレエ団のプリマ桐生綾子。
この人がまた踊れるけど、メンタル病んでて摂食障害というややこしいお人柄。

鯛子はそんな彼女を放っておけず、手を差し伸べます。
最後は桐生綾子も心を開き、バレリーナとして成長し、海外へ飛び出します。

本公演のラストで、鯛子は綾子のかわりにオディールを踊ります。

ベネチア国際編でもエキシビジョンで鯛子がオディールを踊る場面が出てきますが、鯛子にはとても似合っていると思います。

その後、鯛子は三上や市川容子、ケンとモダンダンスの講演を行いますが、やはりクラシックへの情熱を捨てきれず・・・。

三上の恩師でもある谷川愛子に師事。



そして物語は「ベネチア国際編」へと入るのでした。

この谷川先生、ものすごく厳しくて辛らつなんだけど、格好良いんですよね。
一本筋が通っている大人の女性です。

特に、ベネチアへの切符を手にした鯛子を愛ゆえに突き放すところが痺れます。

谷川先生のもとで基礎からクラシックを叩き込まれた鯛子は、これまた超一流プリンシパルで谷川愛子の息子である榊龍一とパートナーを組み、ベネチア国際コンクールを目指します。

鯛子のすごいと思うところは、いつも思いやり深く、でも厳しく相手に接することが出来るところです。

プライドの高そうな龍一も鯛子のこと、ちょっと好きになっちゃったりして。

でも鯛子は三上一筋。

三上が公演中に倉田真理に怪我をさせ、へこんでバレエから逃げ出し山に行ってしまったときも信じて待っていて、すごいなと思いました。

わたしだったら連絡しまくって、逆に逃げられそう・・・。

周囲の協力と本人の努力でベネチア国際への切符を手に入れた鯛子。

次のパートナーは超・超・超一流ロシア人バレリーナのミハイル・ユージンです。
しかも向こうからオファーって・・・。

ちょっとご都合が良すぎませんか?という気もしますが、とにかく持ち前の心の清さでミハイルとも良好なパートナーシップを築いた鯛子。

ついにはベネチア国際で栄えある金のライオン賞を受賞し、三上からもプロポーズされて大団円。
全22巻の大作ですが、最後のほうはちょっとやっつけっぽかったかな?

ベネチア国際編はすごいライバル出てくる→ちょっと問題かかえてる→鯛子仲良くなって、勝つ。
みたいな法則があったような。

でも、ものすごく楽しめる作品でした。

紹介できなった名脇役がたくさんいて、それぞれの人物描写が深いですよね。



ドゥダダンシンの見どころを解説します。

主人公の桜庭鯛子(実家は魚屋)はじめ、登場人物達すべてが才能あるダンサーであることは間違いありません。

しかし、彼らは時に迷い、挫折し、途方にくれるという、実に人間臭い弱さを持っています。

作者の槇村さとる氏はこれらの感情の揺れをごく淡々と、優しさと愛情を込めて描いています(槇村作品の特徴ですね)。

主人公の鯛子は踊ることが大好きな中堅バレリーナですが、バレエの世界に入るきっかけになった母の死以来、どこかに熱を忘れてきています。

そんな風に日々を過ごしていた鯛子の前に世界的なダンサー、三上が現れるのですが、その出会いが鯛子がバレエへの情熱を取り戻すきっかけになっていきます。

この作品が「バレエへの情熱にひたすら燃えまくる」他のバレエ漫画と一味違うのは、ダンサー達がとにかく迷っており、それぞれが事情を抱えていること。

かつて愛した人の死から立ち直れない三上や、毒母の影響から摂食障害に陥るプリマの綾子、乳癌におかされている容子、聴覚障害のレナなど皆「バレエ」ゆえに苦しんでいますが、彼らを救うのも「バレエ」だということも、この作品では描かれています。

そしてとにかく魅力的なのは、主人公の鯛子の存在です。

心優しく、たくましく、そして失う痛みを知っているからこそ他人の痛みに共感できる繊細さを持つ彼女の力で、人々は少しずつ歩くことの・・「バレエ」への情熱を取り戻していき、それが作品を輝かせていると言っても過言ではありません。

また、この作品は「親子関係」にも焦点を当てており、鯛子を温かく見守る父ちゃんのぶっきらほうな優しさや、娘に対し「支配」という名の歪んだ愛情を持つ大女優・龍多香子、不器用さゆえに息子への愛情を上手く伝えられない谷川先生などの様々なタイプの親が登場し、これが作品を盛り上げるスパイスになっているのです。

もちろん主題である「バレエ」のシーンも沢山登場します。

華やかで美しい絵柄と相まって、読者はその紙面から音楽や動きすら感じることができそうです。

また、同じ役柄、演目でも、それぞれの役の解釈、個性などで全然違うものになるのか、という目からウロコなシーンが目白押しで、その万華鏡のような絵にドキドキしてしまいます。

特にダイナミックかつ妖艶なブラックスワンを踊る鯛子の美しさにはハートを撃ち抜かれること間違いなしです。

それと、不器用な鯛子と三上のラブストーリーも同時進行していきますが、これがなかなか進まない!

舞台上での情熱的なパートナーシップとは裏腹なポンコツぶりには思わず笑いを誘われますが、その不器用さこそが、彼らの魅力であり、踊りの糧となっていることは間違いありません。

天才少女とうたわれながらも挫折し、中堅バレリーナに甘んじていた鯛子は様々な人々と出会い、ぶつかり、倒れ、再生し、救い、救われますが、それはそのままわたしたち読者の人生にも重なって、より親近感を感じることになるでしょう。

作者の槇村さとる氏は熱狂的バレエファンで有名で、ご自身もバレエ教室に通いつめるほどの情熱を傾けているそうですが、そのため難解なバレエの動きや名称も、素人にも理解できるように分かりやすく作品内で説明をしてくれます。

その素人への優しさがこの「ドゥ ダ ダンシン」という作品にたっぷりとこめられていて、これからバレエを始めようとしている人たちや、バレエファンたちのバイブルとなっています。

また、この作品には、槇村氏の他の作品の登場人物もでていて(鯛子の兄嫁の亜希さん)、槇村作品のファンが楽しめる作品になっています。

バレエ作品を沢山生み出している槇村さとる氏の作品のなかでも不朽の名作ともいえる本作品に酔いしれてみてはいかがでしょうか?

これからバレエを習いたい方々、バレエを観に行く方々、プロのバレリーナを目指す方々にとっての道しるべになる作品であると太鼓判をおせるオススメ漫画です。

 







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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは、ミキコです。 小学1年生〜高校2年生までバレエを習っていました。 一旦はやめたものの20代半ばで再開し、今は週3回レッスンを受けています。 バレエの面白さをもっと知ってもらうために、このブログを書いています。