その時、たまたまついていたテレビで「白鳥の湖」を踊るロパートキナを目にした衝撃は忘れもしません。
2幕のグランアダージオはともすると眠気を誘うことしかないのですが、生まれてはじめて目を見開いて見入った白鳥、みたこともない腕の動きは人間の領域を超えていました。
[voice icon=”http://ballet-ambre.com/wp-content/uploads/2017/10/mikiko.jpg” name=”ミキコ” type=”r icon_red”]わたしはすぐにネットでロパートキナを検索し、DVDをポチり、その後、着々とロパートキナコレクションを手にいれていくのでした。[/voice]そんな私的ロパートキナコレクションの中でもありがたい1枚「世界のプリマバレリーナたち vol.2 ロパートキナのヴァリエーション・レッスン」。
真似しようにも真似できないロパートキナが教えてくれるヴァリエーション・レッスンです。
ラインナップは、どのヴァリエーションもテクニックで見せるものではなく、踊り手の人間性が滲み出る難しいもの。
ロパートキナは物語の一部のキャラクターを踊るだけですが、その物語を雄弁に語ります。
■目次
「ライモンダ」
キャラクターダンスのような首と腕の動きがあります。
ほんの少しの首の動かし方、腕のもってきか方がアクセントになり「ライモンダ」の物語のベースとなる背景を垣間見ることができて想像がふくらみます。
わたしもこんな風に上品に首を動かしてみたいなとそっと思うことに誰も文句は言いません。
ロパートキナはそんな夢を見させてくれます。
「ラ・バヤデール」
ニキヤの踊りは恋人に裏切られたニキヤの哀しさや情念を表現します。
[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″]長い手足が細い体にまとわりつくような振付が、これまた[move]ロパートキナならではの熱苦しくない表現で妙にリアリティ[/move]があります。[/moveline]踊り手の伝えたいものが伝わりすぎて、テクニックのことを忘れてしまいがちですが、ふと我にかえると、これまた技術的にも大変な踊りで、偉大なバレリーナの表現力と技術力が旬の時期に居合わせた自分は幸せものだと思ったりしてます。
「パキータ」
たくさんのソリストがテクニックを競い合うようにヴァリエーションを踊るのですが、その中でもエトワールが踊りはテクニックだけではないニュアンスのある踊り、強さと可憐さが一度に味わえる曲です。
わたしとしてはロパートキナにはドラマのあるものを踊ってもらいたいので少しこのヴァリエーションは物足りません…。
まぁこのDVDにはそもそもヴァリエーションを教えてもらうというお題があるので、世のバレリーナの教えてもらいたいニーズには一番このバリエーションが答えてそうだと思います。
最後はロパートキナといえば…の「瀕死の白鳥」
これはもはやレッスンといえども手の届かない最高の逸品を見せられてるだけです。
いやでも、おそらく、多分、彼女の語ってくれる言葉は、これから「瀕死の白鳥」を踊ろうとする方のアドバイスとなることでしょう。
今更ですが、ロシアのバレリーナはどの国のバレリーナよりも背中の柔軟性が強調されていると思うのです。
「瀕死の白鳥は」背中の柔軟性と骨の抜かれたような腕の動きなしでは語れないものだと思います。
[moveline color=”#afeeee” sec=”5″ thick=”40″ away=”2″][move]ロパートキナのその動きは異次元で、人間ではなく白鳥[/move]です。[/moveline]その上でわずが数分の曲を踊ったにもかかわらず、白鳥の生きざまを見たかのような満足感を味わえるのです。
ロパートキナの「白鳥」を見る前と見た後では「白鳥」たるものの認識が変わります。
気をつけなければ他の「白鳥」が見れなくなってしまいます。
まとめ
さらに今更つけ加えるならば、ロシアの暗くて、ジメジメした雰囲気はどこにいった?
このレッスン風景を見てシンプルで明るいレッスン場やロパートキナの洗練されたレッスンスタイルにロシアの今はこんななんだと古い時代の記憶しかない私は感動したのでした。
マリインスキー劇場という伝統と格式の世界が開かれて進化しているのではないかという感覚と、おかげさまでロパートキナの映像がこんなにクリアにしかもお手頃な値段で手に入る世の中にありがとうと言いたいものです。
そして、ヴァリエーションのレッスンをするわけではないが(いやむしろレッスンしたら幻滅する)ロパートキナの発する言葉に「なるほど、そうか」と頷いて見ています。
勉強になる。今後、バレエを踊ることがなく、見る専門の方々にも大層重宝する、オススメDVDです。
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