踊らずにはいられない!少年のピュアな情熱を描いた青春物語「リトル・ダンサー」。
こんにちは!
突然ですが、あなたは自分の人生を変えてしまう程、何かに夢中になったことはありますか?
わたしは、子どもの頃も今も、好きで好きでたまらないくらい熱中できるものありません。
[voice icon=”http://ballet-ambre.com/wp-content/uploads/2017/09/kohaku.jpg” name=”いろは” type=”l icon_yellow”]なので、この映画『リトルダンサー』を見たときは、さわやかな感動の後、主人公のビリーがとてもうらやましく、小さな嫉妬のような感情を持ったことを覚えています。[/voice]■目次
自分の環境への閉塞感からクラシックバレエにのめり込むビリー
子どもの好きなことはできるだけ支援したいと考える親御さんも増えているでしょう。
現代のようにこんなに恵まれた環境はないと思いますが、この映画を見ていると、環境が全てではないかもしれないと感じます。
この映画の主人公ビリーは、自分のおかれている環境にとてつもない閉塞感を感じています。
だからこそ「踊っている間だけは、全てのことを忘れて鳥のように自由になれる」とクラシックバレエの世界にある意味救いを見出し、どんどんのめりこんでいきます。
その情熱や努力、貪欲さが、少年特有のピュアさと相まって、とてつもなく力強いエネルギーとなってビリーの人生を根こそぎ変えていくのです。
映画「リトル・ダンサー」のあらすじ(ネタバレを含みます。)
イギリス北部の小さな町が舞台
少年ビリーは、炭鉱夫の父と兄、そして認知症の祖母と一緒に暮らしていました。
父と兄は炭鉱のストライキに参加。
閉塞感のある毎日を送っていたビリー
ある日、父の勧めで通っていたボクシングジムの片隅で、クラシックバレエの不思議な魅力に取りつかれます。
そして、父親には内緒でレッスンに通い出し、寝ても起きても頭の中はバレエの事ばかりという毎日を送ることになります。
ビリーのバレエへの情熱を知り、時に厳しく、しかし真剣に指導するウィルキンソン先生。
ビリーのレッスン通いは父の知れるところとなり、父は激怒
ビリーがどんなにバレエを踊りたい気持ちを伝えても、「バレエは女のもの」と首を横に振るばかり。
ストライキの状況は悪くなる一方で、誰もが頭を悩ませる中、父は初めてビリーが本気で踊る姿を目の当たりにします。
父は、自分の偏った考え方や都合で、子どもの自由な夢を壊してはいけないと気付きます。
ビリーを応援したいと心を決めた父
そして、ビリーにロイヤルバレエ学校のオーディションを受けさせるために奮闘します。
オーディションで見事合格したビリーは、地元を離れ、そして14年後、大勢の観客に混じって家族が見守る中、大舞台で大きな夢を形にします。
炭鉱、ダンス、熱心な先生と聞いて思い出すのは…?
2006年に公開の「フラガール」との共通点は?
ジャンルは違いますが、自分の本心に気付かずにレッスンに通い続け、そして心の底から湧きあがる「踊りたい」をいう気持ちに正直になった時に、人々の心まで動かしてしまう、というテーマは、通ずるところがあると思います。
「フラガール」の蒼井優の隅々まで行き届いた動きや憂いを持った表情、とても素敵でしたね。
また、破天荒ながらも生徒の素質を見抜き、最後まで見守り続ける先生役の松雪泰子と、「リトル・ダンサー」のウィルキンソン先生も、なんだか似た雰囲気を感じます。
炭鉱という環境が、男と女の性差を強調させるのか、はたまたそういう時代だったのか?
当時の経済的、性差的な閉塞感の中で、バレエやフラダンスという現実離れした踊りがただ単にエンターテイメントというだけでなく、人々の心を打つ「自由への翼」のような魅力を持っていたような気がしてなりません。
どちらも素敵な作品で優越つけがたいのですが、ここであえて「リトル・ダンサー」の魅力を強調するのであれば、それはやはり「ダンサーが男性」ということでしょう!
一般的に踊りというのは、どんなジャンルでも女性のものというイメージが強いですし、男性が入る場合も、それは女性のサポート役という印象を受けます。
特に、クラシックバレエの場合、男性バレエダンサーの主な役は、王子様、王様、悪魔、魔法使いなど、主人公(お姫様など)の引き立て役がほとんどです。
しかし、この「リトル・ダンサー」のビリーが目指しているのは、王子様ではなく、1人のダンサー。
ただ踊りたいという情熱をそのまま身体全身で伝えてくれるダンサーです。
ビリーの披露するダンス
[voice icon=”http://ballet-ambre.com/wp-content/uploads/2017/09/kohaku.jpg” name=”いろは” type=”l icon_yellow”]劇中では、父親の前で踊ったり、オーディションで踊ったりしますが、何かの役ではなくありのままの自分としてダンスを踊るビリーの姿があります。[/voice]さらに、男性ならではの力強いジャンプ力や回転力、そして、ちょっとコミカルな振付もお茶目に踊りきってしまう魅力があります。
最後のシーンで、その彼の成長した姿が見られるのですが、それを演じているダンサーに大きく頷く事ができるのは、そんな理由があるからかもしれません。
映画界としては異例!?舞台出身スティーブン・ダルドリー監督の記念すべき第一作目
映画「リトル・ダンサー」の制作陣の中で、ひときわ目を引くのが、監督のスティーブン・ダルドリー。
ブロードウェイなどの舞台での演出経験が豊富なダルドリー監督が初めての長辺映画として挑戦したのが本作なのです。
細やかなダンスシーンが丁寧に描かれていたり、主人公の繊細な表情や間の取り方にぐっとくるのも、舞台出身者だからこその独特な演出方法が関係しているのでしょう。
この作品は、アカデミー賞で、監督賞他3部門にノミネートされ、全世界で大きな人気を呼びました。
- めぐりあう時間たち
- 愛を読むひと
- ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
- トラッシュ! -この街が輝く日まで-
などがあります。
わたしが好きな作品ばかりばかりです(*^^*)
現在は、2019年12月にアメリカで公開予定のミュージカルを映画化した「ウィキッド」を手がけているところだとか。
早く映画館で観たいです。[/voice]
25歳のビリーを踊るのは、世界的な人気バレエダンサー、アダム・クーパー
先日サプライズ訪問に来て下さったアダム・クーパーさんが、なんともう一度、レッスン中のビリー達に会いに来てくれたのです!今度は記念写真撮影にも成功!! Thank @adamrcooper for coming to meet Japanese Billies!! pic.twitter.com/5ClQKmBqrR
— ミュージカル『ビリー・エリオット』 (@Billy_Japan) 2017年4月26日
最後のシーンでほんの数秒登場し、華麗な大ジャンプを見せるのは、世界的に絶大な人気を誇るバレエダンサーのアダム・クーパーです。
彼はイギリス出身のバレエダンサーで、元英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルなので、ロイヤルバレエ学校に通っていたビリーの成長した姿としてぴったりの配役ですが、それだけではありません。
彼が演じているのは、マシュー・ボーン演出による「マシュー・ボーンの『白鳥の湖』」というコンテンポラリーバレエ作品のワンシーンです。
上半身裸で真っ白な羽で包まれたパンツに、鳥を思わせる奇抜な化粧。
クラシックバレエのレパートリーの中でも王道の「白鳥の湖」をコンテンポラリーダンスのスタイルで、男性ダンサーをたくさん起用して作られたのが、この「マシュー・ボーンの『白鳥の湖』」なのです。
男性同士の悲恋というテーマもさることながら、そのダイナミックな振付や男性ダンサーによる白鳥の踊りは、初演された1995年当時、大変なセンセーションを巻き起こし、世界各国の人々を魅了してきました。
日本でも絶大な人気を誇り、これまで何度も来日公演が行われています。
クラシックバレエの古典的で形式的な中にある計算された美に比べ、コンテンポラリーバレエでは、踊りの本質というか、形式や配役に囚われない踊りそのものの美しさを表現するところがあります。
そして、そのコンテンポラリーバレエで活躍するのが男性のバレエダンサーです。
この映画「リトル・ダンサー」の主人公ビリーの成長した姿として、そんなコンテンポラリーバレエで大活躍しているアダム・クーパーが選ばれています。
そのことから、ビリーが大人になってもずっと「踊る」事に魅了され、その心を忘れずに、更に1人のダンサーとして輝きを増していることがわかりますね。
とても感動します。
映画「リトル・ダンサー」を舞台で鑑賞できる!?ミュージカル版「ビリー・エリオット」
この映画作品をもとに、英国の人気歌手エルトン・ジョンが作曲したミュージカル「ビリー・エリオット・ザ・ミュージカル」が2005年、ウエストエンドで上演開始され、その後2008年にはブロードウェイに上陸。
第63回トニー賞でミュージカル作品賞他10部門を受賞し、大変な話題を呼びました。
映画「リトル・ダンサー」でも、イギリスのロックミュージックが要所要所に挿入されていて、主人公ビリーの自由への憧れの爆発するような気持ちを表現しているのですが、ミュージカルでもやはり音楽はイギリス人作曲家というのが文化的な背景にぴったりきています。
ただ、エルトン・ジョンは、ロックというよりはもう少しポピュラー寄りで、「ライオン・キング」などのミュージカル作品も手掛けた事があるので、耳には優しいでしょう。
しかし、「ビリー・エリオット・ザ・ミュージカル」の一番の魅力は、なんといっても舞台上で主人公が飛ぶ、フライングシーン(空中遊泳)です。
フライングについては上の映像が分かりやすいです。
背中にワイヤーを固定し、舞台上部からそのワイヤーを使ってキャストを吊りあげ、まさに空中遊泳するような状態でダンスを踊り、観客に立体感あるパフォーマンスを見せる演出方法のことです。
よくジャニーズの舞台などで使われていたり、またミュージカルではホリプロの「ピーターパン」などでも印象的に使われています。
「ビリー・エリオット・ザ・ミュージカル」では、ビリーが空中遊泳しながら、もう一人の男性ダンサーとパ・ド・ドゥを踊るのですが、それがとても幻想的で美しいのです!
ミュージカル、ぜひ鑑賞してみたいと思った方に朗報!
なんと、ミュージカル「ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜」(日本人キャスト)は、今、絶賛上演中です!終了しました。
10月1日まで東京の赤坂ACTシアターで上演されていましたが、今は大阪の梅田芸術劇場に移り、11月4日が最終公演です。
映画「リトル・ダンサー」の余韻に浸りながら、ミュージカル「ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜」も鑑賞して、映画と舞台、2つの世界観でバレエや踊ることの真髄にふれてみてはいかがでしょうか?
最後になりましたが、この映画は、軸に家族愛が描かれています。
最初はビリーのすることに反対ばかりしていた父や兄ですが、最後ロイヤルバレエ学校に入学が決まったビリーを、二人が見送るシーンは涙なしには見られません。
ぜひ親子で観ていただくと、より感動が深い物になるのではないかと思います。