欧米のバレエ団はシーズン制を取っているところがほとんどで、シーズンは秋から春にかけて行われます。
その時期に合わせてツアーも組まれるので、秋から春にかけて日本でも海外のバレエ団による来日公演を観るチャンスが訪れます。
2017~2018年にかけてもキエフバレエや英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団、ウィーン国立バレエ団など、人気バレエ団が来日する予定です。
中でも今話題の日本人バレエダンサー2人が活躍する大人気の2つのバレエ団に注目が集まっています。
彼女たちが出演する来日公演は、完売必至!
ぜひ早めにチケットを予約しておきたいものです。
それぞれの公演の詳細と見どころについてご紹介します。
■目次
ル・グラン・ガラ 2018~パリ・オペラ座バレエ団トップダンサーたちによる華麗なる宴~
まずは2018年1月のパリ・オペラ座バレエ団による公演についてご紹介します。
- 公演日程:1月11日(木)~1月13日(土)
- 会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
- バレエ団:パリ・オペラ座バレエ団
- 公演タイトル:ル・グラン・ガラ2018
- 演目:「トリスタンとイゾルデ」(全幕日本初演)、「ヴェーゼンドンク」歌曲集(世界初演)他
ケルトに起源をもつ「トリスタンとイゾルデ」は、自分の仕える王の婚約者と愛し合ってしまう騎士の悲恋の物語ですが、それを元にしたオペラの一番の魅力は何と言ってもその音楽にあるでしょう。
ワーグナー作曲のこのオペラ音楽の特徴は、その悲しみや苦しみの感情を、半音階や不協和音で表現しています。
それまでのクラシック音楽は、いかに耳に心地の良い音かという基準で作られていたので、不協和音というのはそれまで使われることのなかった要素でした。
さらに、ワーグナーは音楽に終わりを作ることを拒みました。
「トリスタンとイゾルデ」では、一つのフレーズが終わりそうになったとき、完全に終わる前に次のフレーズが始まるなどして、音楽が終わりのないまま次へ次へと持続していくように作曲されています。
このような作曲スタイルもそれまでは誰もやったことのない初めての試みでした。
ワーグナーはそれまでタブーとされていたことへ踏み込み、音楽の新境地へと向かいます。
トリスタンの愛の苦悩と救済を、大胆な音楽のうねりを使って引き出すことに成功した「トリスタンとイゾルデ」は、ワーグナーの代表作品となっただけでなく、それ以降のクラシック音楽へ絶大な影響を与えました。
そんな音楽的に偉大な作品への挑戦ということで、作品制作の段階からとてもユニークなやり方をとったようです。
同カンパニーで絶対的な人気を誇る二人のエトワール、ドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオを起用した本作は、まず2011年にフィレンツェ市内で公開創作という形で試作され、その後2012年に初演されました。
今回は、満を持して全幕日本初演となります。
創作段階から一般公開されていたという興味深い「トリスタンとイゾルデ」、ぜひこの機会に足を運んでみたいものです。
- S席 14,000円
- A席 10,000円
- B席 7,000円
オニール八菜を日本で見られるチャンス!
「トリスタンとイゾルデ」と一緒に上演される「ヴェーゼンドンク歌曲集」に出演する若手ダンサーの一人が、日本が誇る次世代のホープ、オニール八菜です。
日本出身のバレエダンサーで、8歳のときに父親の母国ニュージーランドへ移住し、バレエを続けました。
2013年から憧れだったパリ・オペラ座バレエ団に入団し、2016年にプルミエール・ダンサーズに昇格しました。
英国ロイヤルバレエや米国アメリカンバレエシアターなどが外国人のダンサーを積極的に雇用するのに対し、パリ・オペラ座は外国人の入団は難しいと言われています。
その狭き門を見事通り抜けて、団員となったオニール八菜、どんなダンサーなのでしょうか?
日本人とニュージーランド人とのハーフなので、まずはその独特の顔付きとすらりと伸びた手足が目を引きます。
そして、なんとあのローザンヌ国際バレエコンクールでは2009年に堂々1位を獲得。
さらに、バレエダンサーとしての顔以外に、ファッションアイコンとしても注目されていて、三越伊勢丹の今年のイメージビジュアルにも選ばれています。
日本の季節感である24節気をダンスで表現するという役割を見事にこなしています。
日本でそのダンスを直接目にすることはほとんどないので、今回の公演はとても貴重な機会です。
ハンブルグ・バレエ団2018日本公演
次に、2018年2月に来日が予定されているドイツのハンブルグ・バレエ団です。
- 公演日程:2018年2月2日(金)~2月12日(月)
- 会場:東京文化会館(上野)
- バレエ団:ハンブルグ・バレエ団
- 公演タイトル: 「椿姫」(2月2日~4日)、「ガラ公演<ジョン・ノイマイヤーの世界>」(2月7日)、「ニジンスキー」(2月10日~12日)
椿姫
同名のヴェルディによるオペラ作品が有名ですが、本作はオペラをモチーフにしているわけではなく、その原作に忠実に描かれているようです。
娼婦と純朴な青年の純愛物語。
そんなドラマティックな演目の音楽としてノイマイヤーが選んだのは、その時代背景にぴったりとはまるショパンの珠玉のピアノ音楽です。
ピアノの貴公子と言われるショパンは、その繊細な音楽と端正な顔立ちで、当時の社交界で一躍有名になった作曲家でした。
ショパン自身も、女流作家のジョルジュ・サンドとの恋愛が有名なほど、ロマンティックな人生を送っています。
ショパンの繊細且つ情熱的な音楽に合わせてどんなバレエが見られるのか、期待したいところです。
ニジンスキー
バレエ界の天才ニジンスキーへのオマージュのような作品です。
現代のモダンバレエやコンテンポラリーバレエの基盤となった20世紀初頭の芸術軍団バレエ・リュス。
その中心的ダンサーで圧倒的なカリスマ性で観客や仲間たちを魅了したニジンスキーの壮絶な人生を振り返る本作では、「牧神の午後」などの彼の代表作品を垣間見ることができるようです。
ダンサーの一生を振り返るということで、前半はクラシックバレエを中心に踊られますが、中盤からはモダンバレエ、さらにコンテンポラリーバレエまで、幅広いスタイルを一挙に楽しむことができる珍しい舞台になりそう!
バレエファンの方でも、コンテンポラリーバレエはちょっと難しくて苦手と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、クラシックバレエで訓練された頭でいきなりコンテンポラリーバレエを見ても、最初は理解が難しいこともあるでしょう。
しかし、ニジンスキーの人生を振り返るという形でクラシックからコンテンポラリーへの変貌をたどるという形を取れば、きっとすんなりとその世界観を感じ取ることができるでしょう。
- S席23,000円
- A席20,000円
- B席17,000円
- C席14,000円
- D席11,000円
- E席8,000円
菅井円加を日本で見られるチャンス!
2012年のローザンヌ国際バレエコンクールでみごと1位を獲得し、一躍表舞台へ舞い出た次世代のエース、菅井円加。
2014年からハンブルグ・バレエ団に所属し、次々と昇格し、現在はソリストとして活躍しています。
2月2日の「椿姫」の公演では、ヒロインの友人、プリュダンス役で出演予定です。
ローザンヌでの受賞が記憶に新しい菅井円加ですが、彼女の踊るジョン・ノイマイヤー作品で感動を塗り変えたいものです。
コンテンポラリー作品の見どころは?
今回お勧めした2つのバレエ団による公演ですが、どちらも伝統的なクラシックバレエを踊るカンパニーでありながら、これらの公演はコンテンポラリーバレエのパフォーマンスになります。
クラシックバレエとコンテンポラリーバレエ、どのような違いがあるのでしょうか?
一般的には、形式的なクラシックバレエに対し、コンテンポラリーバレエは思想的だと言われています。
また動きや身体の使い方がとても自由なので、音楽的なアプローチもしやすく、それが作品に反映されていることが多いです。
コンテンポラリーは難しい?
バレエを学ばれている方の中には、コンテンポラリーは少し難しくて理解できないと言う方も結構たくさんいます。
クラシックの感覚でコンテンポラリーを観ると、その見慣れない動きに違和感を抱いてしまうからでしょう。
そんなときは、あまり頭で考えずに音楽に集中してみてください。
一生懸命音楽を聴き、踊りは目の片隅で流し観る程度で鑑賞すると、丁度良い具合に頭を使わずに鑑賞できるでしょう。
今回ご紹介した2つのバレエ団が取り上げている作品は、どれも音楽的にはマスターピースと呼ばれるような作品を使っています。
バレエは総合芸術。
ぜひ多面的に鑑賞する機会として、ジャンルにとらわれずに色々な作品を観てみてほしいなと思います。
バレエ界の登竜門的な存在のコンクールであるローザンヌ国際バレエコンクールでも、1999年からはコンテンポラリーのバリエーションが審査に取り入れられました。
時代の流れから見ても、クラシックとコンテンポラリー両方を踊ることができるダンサーがこれからのスターとして求められている素質のようです。
できればライブで観たい!バレエ公演
インターネットで世界中の色々な映像が自宅で鑑賞できる現代、素晴らしい時代です。
海外有名バレエ団のパフォーマンスをインターネット上やDVDなどで気軽に観ることができます。
バレエファンにも嬉しいテクノロジー!
どのカンパニーがどんな踊りを踊るのか、また有名振付家の振付などについて幅広く学ぶ機会が増えました。
動画サイトを使えば、好きなバレエダンサーが踊る色々な作品を手軽にほとんどお金をかけずに鑑賞することもできます。
とてもありがたい話ですが、一方で生で観劇するためのハードルが今まで以上に上がってしまったともいえるかもしれません。
バレエ公演をライブで鑑賞するために劇場に足を運び、その場の空気と共にパフォーマンスを鑑賞することのメリットは測り知れません。
ライブ鑑賞のメリット
- 舞台全体を立体的に鑑賞できる
- 周りのお客さんの反応を知ることができる
映像での鑑賞が一面的であるのに対し、ライブ鑑賞では舞台の奥行きや客席との距離間なども含めた立体的な鑑賞が可能です。
また、他のお客さんの反応も一緒に楽しむことができるというのも、もう1つのメリットです。
同行者がいてもいなくても、その場にいるだけで公演前の緊張感や公演後の余韻を他の観客の人たちと共感することができます。
そして、その感動に一緒に浸る瞬間は言葉では言い表すことができません。
できれば毎回ライブで鑑賞したいところですが、そこはあなたのスケジュールやお財布と相談する必要がありますね。
ここぞという公演に出会ったときは、ぜひ劇場で鑑賞したいものです。
詳しくは、以下をよんでくださいね。