近くで踊っていて、とっても感激したけれど、言葉がないからどういうシーンなのかよく分からなくて…。[/voice]
[voice icon=”http://ballet-ambre.com/wp-content/uploads/2017/10/mikiko.jpg” name=”ミキコ” type=”r icon_red”]バレエの作品中で使われる、身振り手振りのお芝居のことをマイムって言うの。
これが分かれば、もっとバレエが楽しくなるはずよ。
今日はマイムの話をするわね。[/voice]
パントマイムという言葉は、多くの人が知っていると思いますが、それと同じです。
また、手話やジェスチャーともよく似ています。
マイムを使うことで、言葉を使わないでも大まかなあらすじが伝わります。
基本的ないくつかのマイムを知っておくと、バレエ作品を見るときもより理解しやすく、楽しみやすくなりますよ。
また、演者として舞台に立つ際のマイムへの理解は大切です。
ただ決まった動作をすればいいわけではなく、細かな表現力が求められます。
■目次
バレエのマイムの意味や種類は?基本的なものを解説します。
初歩的なマイムをご紹介します。
まずは、これらから覚えていきましょう。
愛する
[aside type=”boader”]- 両手を重ねながら左胸に当てる
左胸に手を当てる、と文章にしてしまうと簡単ですが、それだけでは不十分。
手のひらを丸く保ち、心臓を包み込むようなイメージです。
誓い
左手を胸に当て、右手は人差し指と中指の2本を立てて上を指します。
天に誓う、という意味で自分の斜め上あたりを指さします。
美しい
右手の甲を左の頬に軽く触れさせ、そのまま反対の頬までをなぞるようにします。
右手の角度は微妙に変える必要があります。
顎のあたりまできたら、手の甲よりも指先を顔に近づけるようにし、自然に流します。
結婚
左手を客席からよく見えるよう前方に差し出し、右手で左手の薬指を指します。
結婚指輪を示し、連想させるマイムです。
私
手のひらを自分の胸に当てます。
両手ですることもあれば、片手の場合もあります。
あなた
手のひらを上にし、肘を軽く曲げながら相手の方に手を差し出します。
「あなた」の場合は柔らかい動作になりますが、表現方法はいろいろあります。
怒っているマイムでは、力強く指をさすこともあります。
王・王妃
王冠を手に持っているようなイメージで、頭の上にその手を持っていきます。
もしくは片方の手首を軽く上に向けた状態で頭の上に持っていき、そのまま横に引きます。
殺す・死ぬ・呪う
こぶしを握った両手を顔の前でクロスさせ、そのままお腹の前まで振り下ろします。
片手でやる場合は、手のひらを上に向け、外から円を描くように頭上でこぶしを握ります。
そのままお腹のあたりまで振り下ろします。
いやです
顔を相手とは反対の方に背けて、手の平を相手に向けて伸ばします。
首を振る動作がついたり、つかなかったりとパターンがありますが、同じような意味です。
違います
首を横に一往復振りながら、手を体の前でクロスさせてお腹の下あたりで開いて止めます。
このとき、手の平は下を向けて手首を曲げるようにします。
マイムでの手の指先の形
手の中指と薬指、親指を軽く内側に入れます。
これはふだん踊るときの指先の形と同じです。
指を指すマイムや、こぶしをつくるマイム以外では、この基本の指先は崩しません。
常に柔らかく、手のひらの中に柔らかいものを握っているイメージでやってみましょう。
「嫌です」「違います」などの強い意思表示のときには、腕をまっすぐ伸ばしたり、手首を大きく曲げたり、普段のバレエにはない動きをしますよね。
しかし、これらのマイムでも指先の形はほとんど変わりません。
人気演目のバレエマイムを解説
バレエ作品を見る前には、ストーリーとそれぞれの作品によく登場する、簡単なマイムをしっておくといいですね。
そのためには、だいたいのあらすじが分かっていると、なお理解が高まります。
全てのマイムを解読できなくても大丈夫。
マイムはテクニックではなく、表現力の確固たるものです。
見るひとの感性によって、微妙に受け取り方が変わることもあるでしょう。
それもまた、バレエの楽しみ方のひとつなのです!
眠れる森の美女のマイムを解説
眠れる森の美女は、内容が分かりやすい作品のひとつなので、初めてのバレエ鑑賞にはおすすめです。
まずはあらすじを一通り知っておきましょう。
眠れる森の美女のあらすじ
長年子供を授かれなかった国王夫妻に、待望の女の子が誕生します。
その名はオーロラ姫。
プロローグは、盛大に行われるオーロラ姫の洗礼祭です。
様々な美質をもった妖精が招待され、それぞれがオーロラ姫に洗礼をしていきます。
しかし、そこに悪の精であるカラボスが登場。
宴に招待されなかったことに怒って呪いをかけてしまいます。
それにより、オーロラ姫は100年の長い眠りにつくのです。
善の精であるリラの精は、
「オーロラは死んでいない。眠っているだけだ。王子のキスによって、オーロラ姫は眠りから目を覚ます」と話します。
第1幕
洗礼を受ける前の少女のオーロラ姫のシーンです。
16歳のあどけない少女のオーロラ姫は、4人の男性と可憐に踊りを披露します。
そこに現れた一人の老婆が、オーロラ姫にバラを渡すのですが、そのバラのとげが指に刺さったとたん、倒れてしまいます。
そう、この老婆に扮していたのが悪の精、カラボスです。
第2幕
第1幕から100年後のお話です。
森を訪れたデジレ王子は、リラの精に出会います。
リラの精は、王子にオーロラ姫の幻想を見せ、デジレ王子がオーロラ姫に恋をするよう仕掛けるのです。
王子はリラの精に導かれ眠りの森にある城に入り、本物のオーロラ姫を見つけます。
王子がオーロラ姫にキスをすると、オーロラ姫は長い眠りから覚めて王子と恋に落ちます。
第3幕
デジレ王子とオーロラ姫の結婚式の場面です。
ここでも様々な妖精や、おとぎ話の主人公たちが招かれ、それぞれ楽しく華やかに踊りを披露。
最後に、デジレ王子とオーロラ姫のグラン・パ・ド・ドゥで幕を閉じます。
眠りの森の美女は、比較的単純な物語です。
このあらすじを頭に入れておけば、どんなマイムが物語の重要なポイントになるかが、おのずと分かります。
例えば、第1幕のリラの精は「呪い」「死ぬ」「キス」などの言葉はマイムではっきり示します。
そして、第2幕の後半には、デジレ王子がオーロラ姫に求婚するシーンがありますね。
ここでは「愛している」「美しい」「結婚」などのマイムが登場します。
最後の第3幕では、結婚式が行われ「愛している」「誓い」などのマイムが登場します。
[aside type=”normal”]さらに、トラヴェステイの役のマイム表現にも注目しましょう。
トラヴェステイとは、物語の重要人物で、男性が女性に変装して演じられることが多いです。
そのバレエ団でかつて活躍したベテランの男性ダンサーがつとめることが多いので、その実力は見逃せません。
この作品では、カラボスがその役に当てはまります。
カラボスはバレエテクニック的な見せ場はありませんが、その演技力によって物語全体を動かします。
[/aside] [voice icon=”http://ballet-ambre.com/wp-content/uploads/2017/10/mikiko.jpg” name=”ミキコ” type=”r icon_red”]「眠れる森の美女」のより詳しい解説は下の記事ををよんでみてくださいね。[/voice]
白鳥の湖のマイムを解説
白鳥の湖は、最も有名なバレエの演目ですね。
しかし、内容を詳しく知らない人も多いので、あらすじをみていきましょう。
白鳥の湖のあらすじ
第1幕
ジークフリート王子の成人のお祝いの前夜祭が行われます。
そこへ王子の母が数人の女性を連れてやってきて、「この中から結婚相手を決めるように」と言うのです。
王子はそれに困惑します。
愛してもいない女性を妃にしなければならないことに、絶望しながら物思いにふける王子。
そのとき、夕暮の空へ飛び立つ白鳥の群れを目にし、その姿に惹かれて王子は夜の湖へ出かけます。
第2幕
夜の静かな湖のシーンです。
一羽の美しい白鳥が、少女に姿を変えるのを見て王子は驚きます。
その少女が、主人公となる「オデット」です。
オデットは、
「悪魔に魔法をかけられ、昼間は白鳥の姿に変えられてしまう。
呪いを解くには永遠の愛の誓いが必要」ということを王子に話します。
ふたりはすぐに心惹かれあい、王子はオデットに明日の成人の祝いの席にぜひ来てほしいと誘います。
そこで永遠の愛を誓うと約束するのです。
夜が明けるころ、オデットは王子に別れを告げ、再び白鳥となって飛び立っていきます。
第3幕
いよいよ王子の成人のお祝いの場面です。
ファンファーレと共に宴が始まりますが、そこに一人の美しい女が騎士に連れられて現れます。
実はその女、オデットを白鳥に変えてしまった悪魔ロットバルトの娘「オディール」なのです。
オディールはオデットにそっくりだったため、なんと王子は人違いをしてしまうという展開に。
悪魔の娘、オディールに王子が永遠の愛を誓ってしまった瞬間、悪魔たちはその頭角を現しすべてが明らかになります。
事実を知って絶望する王子は、本物のオデットを探しへ行くのです。
第4幕
再び夜の湖。
王子が悪魔たちに騙されて永遠の愛を誓ってしまったことで、オデットは絶望しています。
湖に身投げしようとしているところを、仲間の白鳥たちが必死に制止します。
王子がそこへ登場し、誤解を解こうともう一度永遠の愛を誓うのですが、オデットはそれを聞き入れません。
湖に身投げするオデットとそれを追いかけ、湖に飛び込む王子の悲しいラストシーンを迎えます。
白鳥の湖では、「悲しい」「涙」「悪魔」「呪い」などのネガティブなマイムがたくさん登場します。
第2幕、第4幕ではこれらの感情表現に注目して見てみましょう。
また、永遠の愛を誓うシーンもマイムがたくさん登場するポイントです。
「愛する」「誓う」「美しい」などのマイムが理解できれば、おおよそ物語は楽しめると思います。
ひとつ特徴的なのは、白鳥のコールドバレエでは、マイムが一切ないこと。
鳥の役なので当然ではありますが、全員が無表情で、決められた動き意外は微動だにしません。
他の演目では、町の人々や妖精たち、宮廷の人たちなど、コールドバレエの人たちも舞台上でマイムのような演技をしていることが多いです。
それぞれに雑談する様子を表現し、表情を変えながらその場になじむよう演技します。
これが、白鳥のコールドバレエには全くないのも特徴のひとつです。
悪魔ロットバルトのマイム表現にも注目しましょう。
この役も、眠りの森の美女の「カラボス」と同じように物語を動かす重要人物です。
ジゼルのマイムを解説
ジゼルもまた、物語が奥深くて演技力の問われる演目です。
あらすじを確認し、マイムのポイントをみていきましょう。
ジゼルのあらすじ
第1幕
ジゼルと恋仲にあるアルブレヒトとのお話からはじまります。
ジゼルは体が弱くいつも母親に心配されていましたが、気立てがよく明るい性格の少女。
ジゼルの住む村にアルブレヒトは身分を隠しながら通ってきます。
アルブレヒトは実は、貴族アルブレヒト大公という身分で、令嬢のバチルドと婚約関係にまである人でした。
何も知らないジゼルはアルブレヒトと楽しい時間を過ごしますが、森の番をしているヒラリオンはこれをよく思いません。
アルブレヒトが何かを隠していることを悟っていましたし、ジゼルに想いを寄せていたからです。
あるとき、村に公爵一行が立ち寄ります。
その中に、とても美しく目を引く女性がおり、アルブレヒトの婚約者バチルドであることをヒラリオンが知ります。
激しい嫉妬心からヒラリオンは激怒し、アルブレヒトが村に隠していた剣やマントを証拠に彼の正体を暴露するのです。
アルブレヒトに裏切られていたことを知って、ジゼルは大きなショックを受けます。
体の弱いジゼルは、そのまま体調を崩し死んでしまうのです。
第2幕
ジゼルのお墓のシーンにうつります。
死んでしまった後のジゼルは、精霊であるウィリの群れになります。
ウィリとは、精霊の女王であるミルタが率いるもので、訪れる男性を呪い殺すのです。
踊りの輪の中に男性を取り入れてしまい、疲れ果てて息絶えるまで逃がしません。
そしてウィリの一員となったジゼルは、墓参りに訪れたヒラリオンを殺してしまいます。
しかし、次に標的となったのは、同じく墓参りに来たアルブレヒト。
裏切られてもなお、アルブレヒトに惹かれていたジゼルは、自分がウィリであるにも関わらず彼を必死に助けようとします。
しかし、女王ミルタはそれを容赦せず、アルブレヒトを寸前まで追い詰めていきます。
あと一息というところで朝の鐘が鳴り響き、女王ミルタとウィリたちは地下に帰っていくのです。
自分が裏切ったことで死んでしまったジゼルにより、命を助けられたアルブレヒトがただひとり、さみしく墓の前に残されて幕を閉じます。
第1幕でジゼルとアルブレヒトが仲睦まじく過ごすシーンでは、明るい恋のマイムが登場します。
しかし、次第にネガティブな感情のマイム表現が多くなります。
「悲しい」「驚く」「死ぬ」「幽霊」などですね。
ただ、ジゼルはとても内容が複雑なお話です。
マイムをすべて単語に置き換えて解釈するのではなく、演じる人の表情、音楽、過去のシーンなどから連想するような感じで見るとよいでしょう。
ひとつのマイムの意味にこだわらず、演目全体の流れをつかむ
知識が全くない状態でバレエを見ても、はっきりしたマイムの意味が捉えられないかもしれません。
しかし予備知識なしで作品を見ても、もちろん大丈夫。
作品を見た後に、あらすじをおさらいし、出てきたマイムを思い出してみるととても理解が深まります。
個人的にその答え合わせも楽しいと思うので、作品を見た後でマイムを調べるという方法もおすすめです。
演目が同じでも流派や振付師によってマイムが微妙に違うこともあります。
最初からマイムを覚えていても、実際に出てくるマイムが違った形をしていることも多いので、ひとつひとつの形にこだわって覚えようとしなくてもよいでしょう。
マイムの表現が上手になるレッスンのやり方は?
美しいマイムにはデコルテのライン、首の伸びなど体のラインが重要になります。
[aside type=”warning”]
手の動きや感情表現に夢中になって、上体のラインに意識がいかなくなることはよくあります。 [/aside]
マイムをするときは、デコルテを少しだけの斜め上に意識して立ちます。
手の動かし方は、肘をやや外側に張り、肘から下の腕を動かすようなイメージで。
そして何より、マイム表現の上達で一番大切なことは、役になりきることに尽きます。
バレエは「演劇」という見方もされています。
元々、舞踏と演劇は同じルーツにあり、美しさや伝え方を追求する過程で分かれたという考え方もあるのです。
つまり、バレエダンサーも俳優にならなくてはいけないということです。
その場だけで身振り手振りをしても、表現に奥行きが出ません。
映画やドラマの俳優と同じで、その人物になるための役作りはとても大事です。
例えば、
[aside type=”boader”]
- 「ジゼルはなぜ裏切られたのに、アルブレヒトを助けたのだろう?」
- 「オデットは、一番憎いロットバルトに再び騙され、どんな気持ちだったのか?」
物語や登場人物を自分のものにするのです。
1度物語の背景に目を向けてから、レッスンに挑みましょう。
マイムを知ると、バレエの見方が変わる
いかがでしたか?
マイムを知ることで、バレエ作品の楽しさは何倍にも広がります。
作品を見る人も、演じる人も同じです。
ダンスではなく、演劇に近いということが感じられるのではないでしょうか。
わたしも、初めてマイムのある役をやったときは、バレエの楽しさを何倍にも感じることができました。
決められたパをこなすだけだったのが、舞台上で自分を表現できる方法が増え、やりがいを感じました。
もちろん、バレエには表現力の前にテクニックがあります。
マイムができる役柄をもらえるよう、テクニックの方も引き続き磨いていきましょう!
レッスンをこなすだけではなく、DVDなどを見て研究するのもオススメです。
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