この映画は第二次世界大戦前から現在(映画公開時は1981年でした)までのパリ、ニューヨーク、ベルリン、モスクワが舞台です。
それぞれの都市に住む4組の家族が時代に翻弄されていく様子を描いた壮大なドラマで、上映時間もなんと3時間を超す超大作!
後日出た「完全版」は5時間にも及びます。
だから体力が十分にあるとき、心して見て欲しい映画です。
ちなみに邦題は「愛と悲しみのボレロ」ですがフランス語の原題は、「Les un et les autres」で「入口と出口」という意味になっています。
「入口と出口」。
ある意味この映画の壮大な内容を簡潔に示しています。
■目次
モデルとなったカラヤン、ピアフ、グレン・ミラー、ヌレエフ
それぞれの都市に住む主人公たちには、実在のモデルがいます。
都市名 | 実在のモデル |
パリ | シャンソン歌手の女王、エディット・ピアフ(…のバックバンドの夫婦にスポットが当てられています) |
ニューヨーク | ジャズの大御所、グレン・ミラー |
ベルリン | 指揮者の帝王、ヘルベルト・フォン・カラヤン |
モスクワ | 「ニジンスキーの再来」と言われ、のちに当時のソビエトから亡命した伝説のバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフ |
シャンソン(フランス)、ジャズ(アメリカ)、クラシック(ドイツ)、バレエ(ソビエト)。
簡単に言ってしまえば、これらの要素・歴史・ドラマが時を経て融合するのがこの映画のクライマックスです。
そしてこの映画のクライマックスと冒頭に使われているのが、邦題の題名にもなっているあの「ボレロ」です。
圧倒的な存在感。モーリス・ラヴェルの「ボレロ」
ちょっと映画の話からそれてしまいますが、フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルの作品「ボレロ」。
ご存知の方も多いと思いますが、ちょっとクラシックの名曲の中でもかなり異質な構成となっています。
「タンタカタ・タンタカタ・タンタン・タンタカタ・タンタカタ・タカタタカタ…」という小太鼓のリズムに乗って2種類のメロディーが交互に繰り返されるだけ。
だんだんと音量も、使う楽器も増えて圧倒的なクライマックスを迎える名曲です。
この「ボレロ」、作曲をラヴェルに頼んだのは、イダ・ルビンシュタインという当時のカリスマバレリーナです。
「ボレロ」を踊れるのは許可された人だけ
もうちょっと映画の話から離れていいでしょうか?
今度はバレエの話。
今や日本を代表するバレリーナ、上野水香さんがこの「ボレロ」を踊るのを許された一人として知られています。
「許される?…ちょっと!誰かに許可が要るの?」
そう、要るんです。
泣く子も黙る世界的振付師、モーリス・ベジャールの許可が無いと、この曲のこの振付は踊れません。
文化遺産みたいなもので認可が必要なんです。
ちなみにベジャールは2007年に他界してしまいました…。
今後はどのようになるのでしょうか?
さて、映画の話に戻ります。
でもバレエの話です。
強烈なインパクトを与えた、ジョルジュ・ドンの「ボレロ」
この映画の冒頭とクライマックスに踊っているバレエダンサー(俳優)がいます。
それがジョルジュ・ドンです。
彼がこの映画で「ボレロ」という作品を有名なレパートリーにしたと言っても過言ではありません!
最後のクライマックス、ジョルジュ・ドンのこの踊りでそれまでの内容を全部彼が持っていってしまった感があります。
それぐらい強烈なインパクトがあります。
これだけでも十分見る価値がありますが、最初から見て、色々あって、ようやくこのラストにたどり着くのは、また感慨ひとしおです。
ベートーヴェンを踊るジョルジュ・ドンもオススメ
もう一つ、バレエファンにこの映画をオススメしたいシーンがあります。
それはベートーヴェンの交響曲第7番終楽章に乗せてサロンで踊るジョルジュ・ドンです。
これは当時、この映画のパンフレットやチラシ、ビデオやDVDのパッケージでもこのシーンが使われていました。
それくらいエネルギッシュで、カメラワークも良い感じです。
またここではスローモーションの場面がちょっと差し込まれます。
そこに「静と動」が見事に表現されていて、映画ならではのバレエの楽しみ方が味わえます。
ちょっぴり複雑。二世代を同じ俳優が演じています。
実際にこの映画を見るとちょっと複雑です。
というのは主役級の人たちがそれぞれ一人二役をしています。
二世代に渡ったドラマなので、お父さんやお母さんを演じている俳優がその息子、娘を演じているので油断しているとこんがらがってしまいます。
ですが圧倒的な大河ドラマと、ジュルジュ・ドンの油の乗り切ったキレキレの踊りを堪能できるので機会があったらぜひ見て頂きたい映画です。
ですが残念ながら、現在DVDやBlu-rayの入手が困難です
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