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「白鳥の湖」バレエのあらすじやバリエーションなどを解説してみました。




■目次

多くの版が作られた「白鳥の湖」

トウシューズを履こうとしているオデット役のバレリーナ冒頭から触れてきたように、白鳥の湖には、多くの亜流があります。
それはこの作品の深さを示唆しているとも言えます。

ここでは、代表的な版を順にご紹介します。

  1. プティパ・イワーノフ版
  2. セルゲイエフ版
  3. ゴールスキー版
  4. グリゴローヴィチ版
  5. ブルメイステル版
  6. バランシン版
  7. ヌレエフ版
  8. ノイマイヤー版
  9. マシュー・ボーン版

1) プティパ・イワーノフ版

「白鳥の湖」の原典と言われるこの版は、不評だった初演を、マリインスキー劇場のプティパとその弟子・イワーノフが大幅に改訂したものです。

いわば、「白鳥の湖」を大成功に導いた版で、今も多くの版がこのプティパ・イワーノフ版を基にしています。
特に2幕は、ほぼ改変されていない場合が殆どです。

ここでの結末は悲劇的で、ロットバルトの呪いは解けず、永遠の世界で結ばれることを願って王子とオデットは湖に身を投げます。

2) セルゲイエフ版

プティパの改訂版で、マリインスキー劇場バレエ団で上演されています。

こちらはハッピーエンドになっていて、オデットがとどめをさすことで、ロットバルトを倒します。

3) ゴールスキー版

ボリショイ劇場で当初上演されていた版です。
プティパ・イワーノフ版よりもスピーディでスッキリした構成になっています。初めて登場人物に道化を導入したことでも知られます。

日本では、東京バレエ団(*)もゴールスキー版で上演していました。
この版はハッピーエンドで、オデットは人間の姿に戻って結ばれます。

*なお、東京バレエ団は、「白鳥の湖」の日本版を初めて上演したバレエ団です。
終戦直後の1946年、会場は、東京の帝国劇場でした。
当時はまだ亜流が無く、世界の初演版、またはプティパの蘇演版だったそうです。

4) グリゴローヴィチ版

ゴールスキーの流れを汲み、ボリショイ・バレエ団が現在上演しています。
この版では大きな三羽の白鳥が挿入され、民族舞踊をトゥ・シューズの踊りに変更しています。

最大の特徴は、王子の葛藤が描かれていることで、ストーリーも王子視点で改変されています。
クライマックスが2幕1場に移り、ここで王子はオディールに求愛するのです。

さらに2001年の新改訂版の結末は、かなり悲劇的です。
オデットは死んでしまい、ジークフリードが絶望の淵に呆然と佇むのです。

5) ブルメイステル版

パリ・オペラ座の初演で採用された版で、ロシア人振付家が原曲に立ち返って再構成しました。
この版は、原曲に基づいてストーリーを明確にし、ドラマ性を強めています。
また、3幕に見られる民族舞踊の踊り手が、実は全員ロットバルトの手先だった、という斬新な展開にしています。

結末はハッピーエンドで、オデットは人間に戻ることができます。
なおこの版は、今年から東京バレエ団でも採用されています。

6) バランシン版

ニューヨークシティバレエで上演されている、コンテンポラリーの要素を組み入れたものです。
1幕編成に短縮されたバージョンも存在します。

他の版との大きな違いは、白鳥以外は黒鳥であることと、衣装が膝丈のチュチュになっていることです。
(*多くの場合、群舞もパンケーキ・チュチュが使用されます)

結末は悲劇的で、王子だけが湖畔に取り残されます。

7) ヌレエフ版

現在、パリ・オペラ座で上演されています。
ヌレエフは、本作の物語が王子の周辺で動くため、王子の物語だと考えました。

そのため、王子の心理描写を明確に描いています。

結末は、悲劇で、最後はロットバルトがオデットを連れ去ります。

8) ノイマイヤー版

白鳥の湖のように」と題され、「白鳥の湖」をモチーフとした新しい作品になっています。
この版は、王と婚約者の恋愛物語が現実の世界であり、王の夢や幻想として、「白鳥の湖」のシーン、ストーリーが展開されます。
「白鳥の湖」が劇中劇になっているのですね。

9) マシュー・ボーン版

男性だけのバレエ団、マシュー・ボーンを世に広めた作品といっても過言ではないでしょう。
本作は、同性愛を描いたコンテンポラリーとして作られ、ストーリーは原典と全く異なります。
バレエ作品としては珍しく、ブロードウェイに進出し、トニー賞で3冠を達成しました。

それぞれの版の比較表

版名 主な上演バレエ団 特徴・来歴 結末 結末の詳細
プティパ・イワーノフ版 マリインスキー劇場 原典 悲劇 死後結ばれることを願い、湖に身を投げる
セルゲイエフ版 マリインスキー劇場 プティパ改訂版 ハッピーエンド オデットのとどめでロットバルトを倒す
ゴールスキー版 ボリショイ劇場、東京バレエ団 道化役を導入
スピーディーな展開
ハッピーエンド オデットは人間の姿に戻り、結ばれる
 グリゴローヴィチ版 ボリショイバレエ団 ゴールスキー改訂版
王子の葛藤を描く
大きな三羽の白鳥挿入
民族舞踊をトウ・シューズ用にアレンジ
悲劇 オデットが死に、ジークフリード王子が絶望する
ブルメイステル版 パリ・オペラ座 ストーリーが明確で、ドラマ性が強い ハッピーエンド オデットは人間の姿に戻り、結ばれる
バランシン版 ニューヨークシティバレエ オデット以外は黒鳥
黒鳥の衣装が膝丈のスカート
悲劇 ジークフリート王子だけが湖畔に取り残される
ヌレエフ版 パリ・オペラ座 王子の物語として、王子の心理描写を丁寧に描く 悲劇 ロッドバルドがオデットを連れ去る
ノイマイヤー版 白鳥の湖は劇中劇
マシュー・ボーン版 マシュー・ボーン 同性愛を描いたコンテンポラリー



「白鳥の湖」音楽の魅力を解説

チャイコフスキー「白鳥の湖」は、ボリショイ劇場から依頼されて作った、チャイコフスキーにとって初めての上演されたバレエ音楽でした。

しかし初演までにも、その後も削除された楽曲があります。

「白鳥の湖」は見てきたように多くの版があり、改訂版の製作や原典に戻っての再解釈が繰り返されてきています。

そのためバレエ団が採用する版によって、主要な曲は共通していても、細部で異なる楽曲やシーンは異なっていることがあります。

また「眠れる森の美女」同様、クラシックコンサートで上演される場合には、以下の6曲からなる、演奏会用の組曲が用いられます。

  1. 情景(2幕)
  2. ワルツ(1幕)
  3. 白鳥の踊り(2幕)
  4. 情景(2幕)
  5. ハンガリーの踊り(3幕)
  6. 情景・終曲(4幕)

これら6曲について見ていきましょう。

1 情景(1幕)

白鳥の湖といえば、これ、というほど有名な主題歌。
オーボエから始まるもの哀しげなメロディが、次第に大きくなっていきます。
そして、盛り上がっていき、1幕のジークフリートの誕生日会へと繋がっていきます。

2 ワルツ(1幕)

誕生日会で村娘たちが踊る、弦楽器によるワルツ。
流れるようなメロディがチャイコフスキーらしいですね。

途中で転調したり、音の厚みを変えながら様々なメロディを展開させ、最後は最初のメロディに戻ったりと、変化に富んだ1曲です。

3 白鳥の踊り(2幕)

有名な4羽の白鳥の曲です。
細かな音の粒で構成され、リズミカルながら寂しさを漂わせています。

4 情景(2幕)

2幕の最初と終わりに使用されています。
幻想的なハープの音から始まり、次第にダイナミックになっていきます。

そしてクライマックスでは悪魔を暗示する音が入り始めます。
「白鳥の湖」のストーリー展開を押し進めるドラマティックな曲です。

5 ハンガリーの踊り(3幕)

バリエーションでお話ししたので、割愛します。

6 情景・終曲(4幕)

少しアップテンポに始まる1曲目の情景のリプライズです。

ここでは、王子、白鳥、ロットバルト3者の感情が順番に表されていき、ストーリーも音楽も最高潮に盛り上がります。

「白鳥の湖」衣装の特徴を解説

パンケーキ・チュチュを身に着けたバレリーナたち「白鳥の湖」では、白鳥及び黒鳥はパンケーキ・チュチュを着用します。
オデットは、もちろん純白で、頭の両側に羽飾りをつけます。

対するオディールは、真っ黒ですが、バレエ団によって、金や赤の差し色が入って妖艶さを演出します。
また、オデットのような羽飾りではなく、ティアラをつけています。

オデット以外の白鳥は、基本的にオデットと同じで飾りが少ないものになっています。

一方で、白鳥以外の人間たちは、スカート丈が膝丈以上のものが多い印象です。
(もちろん、バレエ団によって異なることは言うまでもありませんが)

1幕のジークフリードの友人たちは、膝丈の衣装で、貴族らしい、優雅なデザインになっています。
また、3幕では、各国の姫たちがそれぞれの民族衣装を模した衣装をきています。


「白鳥の湖」オススメDVD・Blu-rayの紹介

ボリショイ・バレエ

圧倒的な表現力を誇るザハロワの白鳥は必見です。

熊川哲也 白鳥の湖 2003

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日本人で見るなら、この方だと思います。
白鳥と黒鳥がWキャストになっています。

チャイコフスキー:バレエ《白鳥の湖》2007

伝統のマリインスキー劇場バレエ団のも必見です。

よくある質問に答えます。

オディールの衣装を身に着けたバレリーナ

瀕死の白鳥って何?

同じ白鳥なので混同されやすいのですが、「白鳥の湖」とは全く別物です。

音楽は、サン・サーンスの「動物の謝肉祭」に含まれる「白鳥」です。
ミハイル・フォーキンが1907年にアンナ・パブロワのために振り付けました。

パブロワの代表的な作品となり、彼女の死後20年間、誰も踊ることがありませんでした。

その後、振り付けを変えてマイヤ・プリセツカヤが踊り、パブロワに続いて自分の代表作となりました。

なぜロットバルトはオデットたちを白鳥に変えたの?

実は初演版では、オデットが白鳥になってしまう理由がありました。
家の事情などが影響していたそうです。

しかし、プティパ・イワーノフ版で改訂する際、話が冗長になるため、ロットバルト(悪魔)に姿を変えられた、と単純化しました。
そのため、ロットバルトが呪いをかけた明確な理由は描かれていません。

結末がハッピーエンドと悲劇の2種類あるのはなぜ?

元々は悲劇として作られたようです。
ただし、解釈が加えられ、ストーリーや楽曲が増減し改訂されていく内に、様々な結末ができました。

特にロシア系の流れでは、改訂される内にハッピーエンドになっていたそうです。

今ある結末は、厳密に言えば、2人が結ばれないもの、現世で結ばれるもの、死後に結ばれるものの3種類です。

死んでしまうと悲劇、と捉えられがちですが、そうとも言えない演出もあり、結末の表現次第なところがあります。

まとめ

長くなりましたが、「白鳥の湖」いかがでしたか?

最後の豆知識ですが、実は白鳥は求愛のダンスをしないそうです。

求愛のダンスをするのはツルだそうですが、真っ白なツルがロシアにはいなかったため、モチーフとして白鳥が使われたと言われています。

もしツルが用いられてタイトルが「鶴の湖」になっていたら、随分印象が変わってしまいますね。



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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは、ミキコです。 小学1年生〜高校2年生までバレエを習っていました。 一旦はやめたものの20代半ばで再開し、今は週3回レッスンを受けています。 バレエの面白さをもっと知ってもらうために、このブログを書いています。