アニメや絵本の影響で子どもの頃から知ってる人も多いわね。
こんにちは、ミキコです。
今回は、「シンデレラ」について書きます。
誰もが知っているシンデレラのお話ですが、実はバレエ団や演出・振付家によって、全然違うのです!
1つ1つ確認しながら、多様な形で上演される「シンデレラ」について学びましょう。
■目次
多様なストーリーで上演されるシンデレラ
シンデレラは、誰もが知っている童話です。
数年前には、あるアイドルがファンイベントで転んだ女の子に対して、「大丈夫?シンデレラ」といって、一部で話題になったとか。
それぐらい知名度の高いお話です。
あまりにも有名すぎてストーリーは1つだと思えますが、バレエでは大筋を変えずに設定を変えて、様々なストーリーで上演されます。
- 英国ロイヤル・バレエ団系…アシュトン版
- パリ・オペラ座バレエ団系…レエフ版
- チューリッヒ・バレエ団を中心とする…シュペルリ版
まずは、最もオーソドックスなアシュトン版でストーリーを確認しましょう。
定番の「シンデレラ」あらすじ
第1幕『シンデレラの家』
シンデレラは気の弱い父と、2人の義姉の4人暮らしです。
義姉はシンデレラを召使いのように扱い、今日もシンデレラに掃除をさせています。
そんなシンデレラを横目に、義姉たちは舞踏会に向けて楽しそうに準備をしています。
そこへ粗末な身なりをした物乞いの老婆が現れ…。
追い返そうとする義姉とは反対に、シンデレラは、パンと大切にしていた母の形見の靴をあげました。
義姉たちが舞踏会に行ってしまい、一人家に残されたシンデレラ。
亡き母や舞踏会に思いを馳せていると、仙女が現れます。
この仙女は、なんと先程の粗末な身なりの老婆でした!
仙女は魔法を使って、形見の靴をガラスの靴に変え、美しいドレスとかぼちゃの馬車もシンデレラにプレゼントします。
そして、真夜中の12時には魔法が消えてしまうため、必ず家に帰るよう忠告し、舞踏会に送り出すのです。
第2幕『宮殿の舞踏会』
ピエロや招待客らがチャルダッシュ、マズルカなどの宮廷舞踊を踊っていると、王子が登場し、舞踏会はひときわ賑やかになります。
更に、遅れたシンデレラも到着。
シンデレラのあまりの美しさに、義姉もシンデレラだとは気づきません。
王子とシンデレラは一瞬で恋に落ち、2人はワルツを踊ります。
しかし、無情にも12時の鐘が鳴り、元の姿に戻っていくシンデレラ。
仙女の忠告を思い出したシンデレラは、慌てて王子の元を去ります。
追いかけることもできなかった王子は、シンデレラが残した片方だけのガラスの靴を頼りに、彼女を探し出すことを誓います。
第3幕『王子の旅と再会』
ガラスの靴の持ち主を探して諸国を巡った王子が最後にやってきたのは、シンデレラの家でした。
シンデレラの家では、2人の義姉が争って無理やりにでも靴に足を入れようとしますが、入りません。
姉を手伝おうとシンデレラがひざまずくと、エプロンから、何かが落ちました。
それは、もう片方のガラスの靴。
その瞬間、王子はシンデレラこそが探し求めていた女性だと気づきます。
すると仙女たちが現れました。
そして2人は結ばれ、幸せそうに光の中を歩いていきます。
アレンジされた「シンデレラ」
ご紹介したアシュトン版は、もっとも王道かつ古いのものです。
初演は1894年で、ロイヤル・バレエの前身、サドラーズ・ ウェルズ・バレエが上演しました。
日本では、新国立バレエ団がアシュトン版を銘打って上演しています。
また、Kバレエカンパニーもアシュトン版をベースに熊川哲也さんがオリジナルの演出を入れて上演しています。
- 主人公は義姉に虐められる不遇な女の子
- 人助けをしたら、その相手(の魔法)によって美しく変身する
- 義姉に連れて行ってもらえなかった舞踏会に行き、王子と恋に落ちる
- 12時になると魔法が解け、王子の元を去る
- シンデレラの落し物(ガラスの靴)を頼りに、王子がシンデレラを見つけ出す
これらの要素を取り入れ、登場人物の設定や演出を変えたバレエがヌレエフ版やシュペルリ版です。
ヌレエフ版「シンデレラ」
1986年にパリ・オペラ座バレエ団で上演されました。
ここでは、場面設定をチャップリンらが活躍した1930年代のハリウッドに移します。
女優を目指す女の子が、人助けをきっかけに、チャンスをつかむ話です。
かぼちゃの馬車ならぬスーパーカー(またはリムジン)に乗って、スーパースターの相手役のためのオーディションに向かうのです。
突然降ってきた栄光に不安を感じた主人公は、オーディション会場を飛び出してしまいますが、スパンコールが輝くハイヒールを落としていってしまうのです。
シンデレラの質素な世界観とはだいぶ異なり、華やかな設定になりましたね。
シュペルリ版「シンデレラ」
ヌレエフ版より原作に近いストーリーですが、舞台設定がバレエになります。
主人公はバレリーナ。
継母や義姉にいじめられますが、バレエ教師の魔法により変身します。
そして、世界的なダンサーが主宰するパートナー探しのための舞踏会に出かけていくのです。
落とした靴は、もちろんトゥ・シューズです。
この版は、チューリッヒバレエ団で上演されています。
ここで、物語の要素と各版の比較を表にしてみました。
アシュトン版 | ヌレエフ版 | シュペルリ版 | |
シンデレラ | 普通の女の子 | 女優に憧れる女の子 | バレリーナ |
美しくする人 | 仙女 | プロデューサー | バレエ教師 |
移動手段 | かぼちゃの馬車 | スーパーカー(又はリムジン) | 不明 |
王子 | 王子 | スーパースター | 有名ダンサー |
王子との出会い | 舞踏会 | 撮影所のオーディション | パートナー探しの舞踏会 |
逃げ去る理由 | 12時になり魔法が解けた | 突然夢が叶い不安になった | 12時になり魔法が解けた |
落とした物 | ガラスの靴 | ハイヒール | トウ・シューズ |
なお、ストーリーが同じ王道のものでも、振付のバリエーションは多くあります。
例えば、ボリショイバレエで上演されるザハーロフ版や、マリインスキー劇場バレエ団で上演されるラトマンスキ振り付けのものなどです。
公演の時間は?
こちらも版によって異なりますが、2017年に新国立バレエ団で上演されたアシュトン版シンデレラは、2時間35分でした。
また、2010年にパリ・オペラ座が来日公演を行った際は、ヌレエフ版で2時間50分でした。
全幕もののバレエとしては標準的な長さではないでしょうか。
作曲家プロコフィエフについて紹介
シンデレラを作曲したセルゲイ・プロコフィエフは、1800年代後半から1900年代半ばを生きたロシアの作曲家です。
初めての作曲は、なんと5歳!
作曲家人生が長いので、非常に多くの曲を作っています。
ピアノ曲を得意としていますが、交響曲、協奏曲、管弦楽曲や、バレエやオペラ、映画のための楽曲も多く作りました。
バレエ音楽は小品が多いですが、長いものだと「ロミオとジュリエット」も手がけています。
当時はロシア帝国の領土だったウクライナで生まれました。
5歳でピアノ曲を作った後、ピアノ曲だけでなくオペラや交響曲を作り、10代前半で和声やピアノなどを本格的に学びます。
その後、サンクトペテルブルグ音楽院で作曲とピアノを学びます。
卒業した直後あたりからロシア革命の機運が高まり、27歳の時にアメリカへの亡命を決意します。
アメリアに行く途中では、日本を経由しており、京都や奈良、横浜、東京などに滞在していたそうです。
日本にも縁のある方なのですね。
無事にアメリカについた後は、アメリカを拠点として数年間、作曲家・ピアニストとして活動した後、拠点をパリに移します。
その後、30代なかばで、1度祖国に2年ほど戻ります。
この帰国を足がかりに、40代半ばでソヴィエトに帰国します。
第二次世界大戦を、作曲しながらソヴィエトで過ごし、終戦後すぐに、「シンデレラ」がボリショイ劇場で初めて上演され、翌年にはこの作品にスターリン賞が送られます。
晩年は脳の病気と闘いながら作曲を続け、62歳でこの世を去りました。
まとめ
「シンデレラ」いかがでしたでしょうか。
有名だからこそ、バレエ団ごとに様々なアレンジを施して特色を出しています。
セットや振付だけでなく、ストーリーまで変えてしまう作品は、バレエ作品の中でも「シンデレラ」ぐらいではないでしょうか。
バレエ団ごとに、それぞれの作品を観比べると面白くなりそうですね。
わたしも王子様が迎えに来ないかな☆彡