まず、答えですが、「限界というのはありません。」
もちろん、生まれつきの骨格の差というのはありますが、これは、大人でも子供でも同じこと。
それよりも大切なことは、
[voice icon=”http://ballet-ambre.com/wp-content/uploads/2017/10/mikiko.jpg” name=”ミキコ” type=”r icon_red”]
- 身体の仕組みを理解すること。
- 身体の仕組みを理解した上で、エクササイズ、ストレッチを行う。
- 正しいストレッチ、エクササイズ、脚の上げ方を知ること。
- そして、毎日、根気強くストレッチを継続すること!
今回は、「脚はどのくらい上がるようになるのか」というご質問なので、脚の正しい上げ方、脚を高く上げるためのストレッチについて、ご紹介していきたいと思います。
まず、脚を高く上げるためには、脚を正しく上げる方法を知ることが大切です、とお話しました。
では、正しい脚の上げ方って、一体どんな上げ方なんでしょうか。
■目次
前に脚を上げる場合
仮にグランバットマンで脚を上げると仮定してお話していきます。
- お尻が開かない
- お尻から足の指先までアンドゥオールを保つ
- 軸足ももちろんアンドゥオールを保つ
脚を上げるにあたって、最も大切なこと。
それは、アンディオールを保つことなんです。
これは、前へ脚を上げるときだけでなく、横や後ろに上げるときも最も大切なことです。
アンディオールが出来ていない状態で脚を上げると、正しくない筋肉(代表的なのは前もも)を使って脚を上げようとしてしまったり、変なところに力が入って、高く脚を上げることができません。
仮に高く上がったとしても、バーを離して踊り始めた瞬間、その高さは失われるか、軸足で立つのが難しくなってしまいます。
前に脚を上げるときは、太ももの裏側(ハムストリング)の部分を、天井に剥けるくらいの意識でアンディオールするようにしましょう。
そして、太ももの筋肉だけで脚を上げるのではないことも、知っておいてください。
上げる足の踵がどんどん天井に吸い寄せられるように、その踵から太ももの裏側が繋がっているのを意識して上げるようにしてください。
股関節は、自分の方へ引きます。
股関節に、折り紙の折り目がついたと思って、その折り目をしっかり折り畳んでいってください。
そして、上げている脚だけでなく、立っている軸脚にも注意してください。
5本指でしっかり立って、アンドゥオールを崩さないこと。
立っている側のお尻が抜けないようにすることもとても大切です。
横に脚を上げる場合
基本的に気をつけることは、前に脚を上げるときと同じです。
お尻が開かないように気をつけ、アンドゥオールを意識し、太ももの力だけで脚を上げないようにすること。
そして、横にタンデュを出したときのラインが崩れないように、まっすぐ真横に脚を上げること。
腰が傾くのも間違いです。
骨盤は常に床と平行であるように意識しましょう。
後ろに脚を上げる場合
後ろに脚を上げる場合は、前や横に上げる場合と少しプロセスが異なってきますが、気をつけるべきアンドゥオール、お尻は同じです。
後ろに脚を上げるときは、まず第5ポジションから後ろにタンデュをし、踵が天井に向かってリードしていくように上げていきます。
アチチュードで上げるときは、踵が自分の頭に向かって円を描くイメージを持たれるといいかもしれません。
一番やっちゃいけないことは、お腹が開いてアラベゴン(後ろでも横でもなく、間違ったアラベスクのことをこう呼んでいます)になること。
これを防ぐには、まず初めは無理に脚を上げようとしないこと。
腰やお尻から無理やり上げようとすると、アラベゴンになりやすいだけでなく、腰を痛めてしまう原因にもなりかねないので、気をつけてくださいね。
腰は必ず真っ直ぐ(両手バーのポジションなら、バーと平行)の状態を保てるようにしましょう。
さて、ここまで、脚を高く上げるために、脚の正しい上げ方をお話してきました。
脚を高く上げるために欠かせないストレッチ
ストレッチというと、開脚やバーを使ったストレッチもたくさんありますが、今回は、お家でもできる簡単なストレッチをご紹介したいと思います。
脚を高く上げるために必要なストレッチについてですが、脚を前に上げるのか、横に上げるのか、後ろに上げるのかで、それぞれ必要な筋肉は違ってきます。
ですので、それぞれのポジションにオススメのストレッチを、これからご紹介していきますね。
と、その前に、少し話が逸れますが、ストレッチの基本を少しお話しておきますね。
ストレッチをするときは、なるべく身体が温まった状態で行うようにしてください。
できればお風呂上がりやレッスンの後なんかがいいですね。
ちなみに私は、お風呂上がりはどうもバタバタしてしまいますので、寝る前に、ベッドの中で行うようにしています。
冷えた状態で急激なストレッチをすると、筋肉がびっくりして、脚が攣ったり、最悪肉離れ、なんてことにもなりかねませんので、お気をつけください。
そして、ストレッチをするときは、ゆっくりと、反動をつけずにおこなってください。
呼吸も忘れずに。
伸ばしていくときに、息をゆっくり吐きましょう。
一生懸命になるあまり、息を止めてしまってはダメですよ。
ストレッチは、一つの姿勢を、だいたい40秒くらいで終えます。
短すぎては意味がないし、長すぎると筋肉を痛めてしまいかねません。
辛い姿勢だな、というときは、もちろんご自分の身体と相談して、20秒、30秒と減らしてみてください。
それよりも、毎日続けてストレッチすることが大切です。
もちろん、1日や2日、できないときだってあります。
そんな時でも、自分を責めないで、またできるときから、ぜひ頑張ってみてください。
1日、2日しなかっただけで、ゼロに戻るということはありませんから、自分のペースで、ストレスがたまらない程度の頻度で、頑張ってみてください。
具体的なストレッチをご紹介
前に脚を上げるためのストレッチ
まず床にあぐらをかいて座ります。
次に右足の踵を右手で持って、脚の形を崩さずに(膝も足首も曲がったまま)、股関節を折りたたむようにして脚を上げていきます。
左脚は、ずっとあぐらをかいた状態のままです。
そしてそのまま右膝を、ゆっくりゆっくり伸ばしていきます。
踵で自分の手をどんどん押していきましょう。
要領としては、座ったままピエラマ(バーレッスンで脚を手で持ってストレッチするやつです)をする感じです。
腰は絶対曲がらないようにしてください。
バレエのレッスンをしているときと同じように、上半身を上へ引き上げて、正しい姿勢を保ちながら行うようにしましょう。
このストレッチは、正しくやると、最初はかなりきついので、脚を手ではなく、タオルやゴムバンドを足の裏に引っ掛けて行うことをオススメします。
このストレッチの良い点は、お尻を床につけて行うので、お尻がずれることを意識でき、防げること。
すると、股関節が間違った方向に逃げることも防げるし、股関節から折りたたんで脚を上げる感覚を身につけることもできます。
正しい姿勢で行うので、当然、正しい部分がストレッチされます。
踵も、なるべく自分の方へ引き寄せて、アンディオールするように心がけてくださいね。
脚は、初めは上げるのが辛いと思いますので、25度、45度でも大丈夫。
膝を完全に伸ばすのが辛ければ、少し曲がった状態で終えても大丈夫です。
毎日続けると、自然と上がるようになっていきますよ。
脚の裏側の筋肉だけでなく、股関節の可動域も広がっていきます。
もし、どうしても座ってやると、腰が曲がってしまったり、あるいは身体がまだ硬くって辛いです、という方は、寝転んで同じストレッチをされてみてもいいかもしれません。
そのときは、床に背中がぴったりとくっついていることと、お尻を締めて行うことを注意してくださいね。
脚は90度以下でも大丈夫です。
初めは、正しい姿勢で脚を上げることを、身体に覚えさせてあげてください。
横に脚を上げるためのストレッチ
先ほどの前に脚を上げるためのストレッチの延長です。
先ほど、前に脚を上げたストレッチの状態から、踵を持っている手で、脚を横へと誘導していきます。
たったこれだけ。
これも、ピエラマの動きと同じですね。
ここでも、膝が伸び切らなければ、曲がっていても大丈夫です。
大切なのは、お尻が動いたり、浮いたりせず、股関節から折りたたんで脚が上がっていること。
上半身を真っ直ぐ保つこと。
これも前へ脚を上げるためのストレッチと同じです。
後ろへ脚を上げるためのストレッチ
後ろへ脚を上げるためには背中の柔らかさも大切ですが、腸腰筋のストレッチもとても大切です。
今回は、腸腰筋のストレッチをご紹介します。
ちなみに、背中は、ある程度固くても、135度まで脚は上がります。
私は、未だにエビゾリのようなストレッチが出来ませんが(腰を痛めるし、背中も固いので)、アラベスクに問題はないし、グランバットマンだと135度は余裕で上がります。
ですので、無理にエビゾリのストレッチをして、腰を痛める、なんてことはされないようにオススメします。
背中が硬くって、上げづらい、と感じていらっしゃるなら、背中をフォームローラでほぐしてあげてみてください。ローラーがなければ、レッスン場でバーを使って少しほぐしてあげるだけでも違います。
もしくは、ヨガの猫のポーズはオススメです。
(四つん這いになって、背中を丸めたり、縮めたりするポーズです。)
背中がほぐれますし、ストレッチもされて一石二鳥です。
背中がどうしても固すぎる、と思っていらっしゃる方は、ぜひ試してみてください。
腸腰筋のストレッチについて
まず、右足の膝を立てます。
左脚は後ろへ伸ばします。
たったこれだけです。
状態はなるべく起こして、壁やバーに掴まれると良いです。
まだまだいけそう!という方は、伸ばした左脚のつま先を手で持って、膝を曲げて自分の方へ引き寄せていきましょう。
このときに、意識してほしいことは、股関節と腸腰筋がしっかり伸びているのを感じられること。股関節が縮まった状態でこのストレッチをしても、あまり意味がありません。
今回のこのストレッチの目的は、腸腰筋のストレッチなので、しっかり伸ばすことを意識してください。
今ご紹介したストレッチを続けて、正しい脚の上げ方を身体が覚えてくれると、レッスンで脚をあげるときも、正しい姿勢で脚を上げられるようになるし、続けることで、どんどん脚は高く上がるようになります。
まとめ
ちなみに、余談ですが、私が以前通っていたバレエ教室に、72歳で初めてバレエを始められた方がいらっしゃいました。
初めは、開脚なんてもってのほか、という感じでした。
彼女に、「どうしたらそんなに脚が上がるようになるの?」
と尋ねられ、私は上記のストレッチをお教えしました。
彼女はとても努力家で、家でストレッチを頑張られたそうです。
1年経った今、前後開脚はピタッと着くし、グランバットマンでも軽々と脚を上げられるようになりました。
そして今は、ポアントを履いて舞台に立つまでになられました。
努力できるって素晴らしいな、年齢って関係ないんだな、とこのとき私は改めて感じたのです。
ですので、皆さんも、年齢に負けないで、目標があるなら、ぜひ頑張ってみてほしいと思います。