華やかな踊りが多くて、楽しいですよ。
ハッピーエンドが好きな人にもオススメです。[/voice]
■目次
「海賊」原作を紹介
バレエ「海賊」の原作は、イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンによる長編の物語詩『The Corsair(海賊)』です。
原作は1814年の作品で、ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュにより台本化され、1856年にパリのオペラ座で初めて演じられました。
原作の日本語翻訳版も出版されていますが、実はバレエの『海賊』とは話の筋が異なります。
登場人物のコンラッド、メドゥーラなどの名前は共通していますが、原作では彼ら2人は既に夫婦ですし、原作には奴隷売買の話は出てきません。
台本化したサン=ジョルジュは、バイロンの「海賊」の世界観を踏襲し、それをバレエで表現するためにかなりアレンジを加えたといえます。
「海賊」登場人物の紹介
- 海賊の首領:コンラッド
- ギリシャの娘:メドゥーラ、ギュリナーラ
- コンラッドの部下:アリ
- 奴隷商人:ランケデム
- トルコの総督:パシャ
「海賊」あらすじ
プロローグ
舞台は19世紀初頭のとあるギリシャの島。
海賊の首領であるコンラッドと仲間のアリ、ビルバントとその船は、沖合で大波を被り流されてしまい、この島の浜辺に流れ着きます。
第1幕
第1場 ギリシャの海岸
浜辺へ現れたのは、奴隷商人のランケデム。
若い娘を探していたところ、向こうからギリシャの娘達がやってきました。
彼女たちは浜辺で遊んでいましたが、その中の1人であるメドゥーラが、人が倒れているのに気づきます。
娘たちはその倒れた海賊たちに駆け寄り介抱し、その際メドゥーラはコンラッドと恋に落ちてしまいました。
コンラッドは自分たちが海賊であること、大しけに遭い船が難破してしまったことを打ち明けます。
そのとき、トルコ兵を連れた奴隷商人ランケデムが現れます。
海賊船があるようだと言い、警備をするトルコ兵を呼んできたのです。
メドゥーラはそれに気づき、コンラッドたち海賊を物陰に隠れさせますが、自分たちは奴隷商人のランケデムにさらわれてしまいました。
物陰から覗いていたコンラッドは、メドゥーラたちを救い出すと決心するのです。
第2場 奴隷市場
たくさんの人でにぎわう奴隷市場では、パレスチナ、アルジェリアなど様々なところからさらわれてきた娘たちが競りにかけられていました。
メドゥーラの友人である美しいギュリナーラもランケデムにここへ連れてこられます。
ギュリナーラを気に入ったトルコ総督パシャは大金を出し、ギュリナーラをハーレムへ連れて行ってしまいました。
これに味をしめたランテゲムは、さらに美しいメドゥーラで大儲けをしようと市場に連れてきます。
メドゥーラの美しさに客たちは息をのみ、先にギュリナーラを手に入れたばかりのパシャまでもが彼女に夢中!
高値で取引しようと交渉していたランケデムとパシャとの間に、たくさんの家来を率いた立派な身なりの男が割り込み、パシャよりも高い金額で買い取ろうと提案します。
立派な身なりの男と張り合うパシャでしたが、突然彼が変装を解き、正体が海賊(コンラッド)であることを明かすと、パシャをはじめ市場にいる客や女たちは動揺します。
この騒動の中、コンラッドはメドゥーラを抱きかかえ、仲間の海賊たちも娘たちを奪い取って隠れ家へと連れて行ってしまいました。
奴隷商人のランケデムも海賊に捕まえられ、連れていかれます。
第2幕
舞台は海賊の洞窟に移ります。
コンラッドたち海賊はメドゥーラを始めとする娘達を連れ、さらに財宝も携えて洞窟へ帰ってきました。
楽しく宴が行われ盛り上がる中、いまだ囚われの身である娘たちは、メドゥーラを通じて自分たちの開放をコンラッドに懇願し、コンラッドはこれを迷いなく了承します。
これをよく思わないのが、コンラッドの部下のビルバントたち。
連れて来た娘や奪った財宝を分配してもらえるはずだったのに、それを反故にされたからです。
どうしてもメドゥーラで一儲けしたい奴隷商人のランケデムは、不満そうなビルバントの心につけ込んで、脱出することを画策。
ビルバントに話を持ちかけ縄を解かせると、ランケデムは眠り薬の染み込んだ花束で、眠ったすきにコンラッドをやっつけてしまえば良い、と提案したのです。
メドゥーラと2人きりになり幸せな時間を過ごしていたコンラッドの元に、ランケデムから花束が届けられます。
喜んだコンラッドは、花束に顔を近づけ香りを思い切り吸い込むと、そのままベッドに倒れ込み、眠ってしまいました。
ビルバントたちに襲われそうになるメドゥーラは必死に対抗しますが、騒ぎの中、結局ランケデムにさらわれてしまいます。
ビルバントたちは逃げ出したランケデムを追い、騒ぎを聞きつけた護衛の者たちも彼らを追いかけて行きました。
ランケデムがメドゥーラをさらったことを知らされたコンラッドは、もう1度メドゥーラを取りもどすことを決意するのです。
第3幕
パシャのハーレムでは、最初に売りに出されたギュリナーラが寵愛を受けていました。
そこへランケデムが訪れ、まずは娘3人をパシャにお披露目しますが、美しいギュリナーラに見慣れたザイードは首を縦には振りませんでした。
想定通りといわんばかりに、ランケデムはもったいぶってメドゥーラを前へと進ませます。
とても美しいメドゥーラを見たパシャは喜びますが、メドゥーラもまた仲良しのギュリナーラと思いがけず再会できたことに喜び、娘たち総出で踊ります。
ハーレムにメドゥーラを加えられる、と舞い上がったパシャが、大金をランケデムに払おうとしたそのとき、敬虔な巡礼の一団がパシャの前に現れ、共に祈りを捧げましょうと申し出ました。
それを歓迎したパシャは祈り始めましたが、その間に巡礼の一行は変装を解き正体を現します。
巡礼の一行はまたもや変装したコンラッドと海賊たちだったのです。
海賊たちはメドゥーラとギュリナーラを連れ、悠々とハーレムを後にしました。
エピローグ
再びメドゥーラを取り戻したコンラッド。
2人は今度こそ幸せにあふれ、晴れ晴れとした表情で大海原を行くのでした。
「海賊」公演時間
「海賊」は全幕上演されることの少ない演目です。
劇場での上演時間は休憩を挟むので、約2時間25分です。
休憩を挟むと1時間50分程度です。
「海賊」の見どころを解説
「海賊」の見どころは、多くのダンサーにソロで踊る機会があること。
主役の2人だけでなく、コンラッドの部下であるアリや、奴隷商人ランケデムなど、色んなソリストの踊りを楽しむことができます。
「海賊」バリエーションの紹介と解説
パ・ド・ドゥ
「海賊」を代表する、もっとも重要なバリエーションがパ・ド・ドゥ。
それを踊る男性は主役の役割かと思いきや、コンラッドの部下にあたるアリが演じます。
ダンサーのバレエテクニックを存分に感じることができますし、メドゥーラにほのかな憧れを抱いているようにも見え、より見ごたえが出てきますよ。
バレエのコンサートで、様々な演目の中からバリエーションを演じる場合や、バレエのコンクールなどでよく見かけますね。
パレスチナやアルジェリアを表現する踊り
奴隷市場での踊りです。
それぞれの衣装も民族衣装風、踊りもエネルギッシュ。
舞台によっては女性だけでなく、男性奴隷も登場するので見応えがありますよ。
グラン・パ・ド・ドゥ
ギュリナーラとランケデムのグラン・パ・ド・ドゥ(奴隷の踊り)も、海賊を代表する踊りですね。
競りにかけられている娘と奴隷商人との踊りは不思議に思うでしょうが、華やかに着飾れられたギュリナーラの魅力を客に存分に披露する、奴隷商人としてのランケデムが表されていると感じます。
女性群舞(コール・ド)
男性たちが活躍する物語である一方、それに相対するように女性群舞(コール・ド)も取り入れられています。
トルコ総督パシャのハーレムでは、美しいメドゥーラやギュリナーラを中心に娘達が華麗な踊りを表現します。
「海賊」音楽の魅力を解説
「海賊」の音楽は、最初に上演された際の作曲家アダンの曲目のままではなく、台本の改訂などに合わせて新曲が加えられてきました。
当初アダンが作曲したものをベースとして、パリ・オペラ座、マリインスキー劇場、ボリジョイ劇場などでの上演の際に、アダンの弟子ドリーブを始めとした合計7人の作曲家により改訂が加えられ、現在世界で上演される海賊の音楽となったのです。
「海賊」の衣装の特徴を解説
海賊のタイトルの通り、海をイメージするような青い色が特徴的。
コンラッドたちの着ているベストや、腰に巻いた布も海賊らしく、動くたびに揺れるのも躍動感がより感じられます。
奴隷市場ではパレスチナやアルジェリアを表現する踊りも見られます。
それぞれの衣装も民族衣装風、踊りも見ていて楽しいですよ。
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