上体を引き上げることは、バレエの基本姿勢を保つことや、軽やかにステップを踏むために重要なポイントになります。
■目次
上体を引き上げるってどういうこと?
まず、上体を引き上げるとは「バレエの基本姿勢」を作ることと通じます。
1番や5番ポジションで立つときの基本姿勢は以下の通りです。
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- おしりを引き締める
- 腹筋に力を入れて、下腹を内側に引っ込める
- 肋骨を内側に閉じるイメージで息を吐く
- 体の脇を強く、ウエストを締める
- 肩を下げ、胸を張る
- 背中をまっすぐ伸ばす
- 頭は軽く乗せるだけのイメージ
- 足の裏で地面を押し、強く立つ
また、1番ポジションと5番ポジションとでは、感覚や難易度も変わってきます。
1番では正しく意識できたことが、5番に足を入れた途端できなくなることも多いです。
「上体を引き上げる」とは、重力をコントロールするためでもあります。
しっかりお腹周りの筋肉で体を支え、いつでもかかとを浮かせられる状態にしておくのがベスト。
軽やかに跳躍したり、高く足を上げてキープしたりするパでは、当然重力に逆らって動きます。
下へ下へとかかる重力に対し、常に逆らう意識を持つことが大切です。
さらに難しいのが、重力に逆らう意識を持ちつつも、かかとで地面をしっかり押しながら立つイメージも必要になること。
上体はしっかり引き上げて重力をコントロールしつつ、下半身では地面を押したり、蹴ったりするのです。
上下で真逆の動きをすることになるので、混乱してしまうケースも多いでしょう。
おしりから上は上に、脚は下にと、上下両方に意識を持っていくようにします。
ア・テール(地面)で静止している状態なら、この上体の引き上げをキープしやすいですが、これを踊りの中でも意識し続けなければなりません。
というよりも、この引き上げの意識がなくなってしまうと、どんなパもうまくこなせなくなってしまうのです。
ただ反対に言えば、上体の引き上げのコツを掴めば、どんなパにも挑戦しやすくなり、上達が圧倒的に早まるということでもあるので、頑張って練習していきましょう!
上体を引き上げる感覚が分からない。なにを意識すればいい?
引き上げが大切なことはよく分かったけれど、実際に体で実感できないという人も多いのでは?
そこで、ちょっとしたコツを紹介します。
骨盤底筋の場所を認識しよう!
上体の引き上げに欠かせない筋肉、それが「骨盤底筋」です。
なんとなく聞いたことはあるけど、実際どこの筋肉なのかはっきり分からない人も多いでしょう。
骨盤底筋とは、腸や子宮などを支えているインナーマッスルです。
外から触ることも見ることもできない筋肉で、ここへの意識は本人にしか分かりません。
まさに「感覚」的なものです。
骨盤底筋に力を入れるには「肛門を締める」イメージが最も分かりやすいです。
「おしりを引き締める」「おしりに力を入れる」とよく言われますが、引き上げに重要な力の入れ方は「肛門を締める」ことです。
肛門を締めると、恥骨の上あたりの下腹が硬くなるのが分かりますか?
おしりのお肉に力を入れるのと、肛門に力を入れるのとでは、それに伴って発達する場所が変わります。
それぞれ力を入れ比べてみてください。
上半身の正しい形をマスターしよう!
上半身の使い方や意識ももちろん大切です。
まず、肩甲骨をしっかり開き、背骨がまっすぐ伸びるように立ちます。
肩甲骨を開くと、自然に胸が張り、デコルテが広く美しくなります。
また、頭はその上にちょこんと乗せているだけで、力をいれません。
あごは首に対して90度くらいに保ち、上がりすぎても下がりすぎてもダメです。
首の後ろに糸が付いていて、上から吊り上げられているようなイメージともよく表現されます。
糸で上からつられていると、背筋や首はまっすぐ伸び、あごの位置も上がりすぎません。
つまり、上体は大きく揺れたり上下したり、形を大きく変えてはいけないのです。
なるべく頭の高さが変わらないようなイメージを持って踊ってみましょう。
あくまでもイメージで、実際ルルベ・アップやプリエ、ジャンプなどをすれば当然頭の位置は変わります。
ただし本人の意識だけは、なるべく頭の位置が変わらないように心がけるのです。
とても難しいですが、上半身のアップダウンが激しい動きはバレエには存在しないということ。
ジャンプやルルベ・アップのときに、お腹周りで引き上げていないと、肩で上がろうとしてしまうこともあります。
首が短くなって肩が上がると見栄えも悪くなり、余計なところに力が分散されてしまうので注意しましょう。
体幹を意識する
最近「体幹」という言葉がよく使用されるようになりました。
バレエでもこの体幹を意識することは非常に重要です。
体幹というのは実は、胴体のすべての筋肉ということ。
上半身の筋肉をすべて意識することを「体幹を意識する」と言います。
ひとつやふたつの筋肉ではなく、全体的に意識して動くということが大切です。
バレエの基本姿勢や引き上げが上手くできると、自然とその他の体の使い方に繋がります。
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- アンディオールの脚使い
- 重心移動
- 動きの安定感
- バランス力
冒頭でも述べたようにバレエの基本姿勢を保つことや、軽やかにステップを踏むことは、上体の引き上げなしにはできないことです。
バレエに必要な様々な要素すべてに、上体の引き上げや基本姿勢が影響しているのです。
上達のためのトレーニング方法を紹介します。
仰向けアンオー
[aside type=”boader”]- 仰向けに寝転がり壁に足をくっ付ける
- 足を1番ポジションにし、肛門に力を入れる
- 手を上にあげてアンオーのポーズをとる
そして肩甲骨は、左右ともに床にくっつきます。
今度は5番ポジションでやってみましょう。
寝た状態で5番ポジションに足を入れるのは、少し難しいです。
苦しいときはかなり浅くても構いませんので、足をアンディオールでクロスさせましょう。
このとき、背中や首の下あたりが伸びているのが理想です。
肩甲骨は、1番ポジションンのときのように床にぴったりくっつきません。
骨盤底筋から下半身にかけて力を入れ、背中に空間ができるようにします。
この体勢をキープするのは、最初はとてもきついです。
腹筋や背筋にも負荷がかかるので、引き上げに必要な筋肉を効果的に鍛え、意識も強まります。
自宅で積極的にトレーニングしてみましょう。
姿勢矯正ストレッチも効果的
大人の初心者は特に、長年悪い姿勢のまま過ごしているケースが多いです。
慣れてしまった姿勢を正すには、バレエのレッスン中だけでは時間が足りません。
バレエを習うと姿勢がよくなると言われるのは、上体の引き上げによって「脊柱起立筋」をしっかり使うためです。
脊椎起立筋とは、背筋を正しい位置に引っ張っている筋肉になります。
もしジャンプの着地やターンの途中で背中が曲がってしまうなら、この脊柱起立筋の発達の「バランスが悪くなっている」可能性があります。
まずはこの筋肉をストレッチさせ、しっかりほぐすことが大切
- 四つん這いになる
- 背中を丸めて内側に小さく丸まる
- 足の位置は変えずに手を前に伸ばす
- そのまま上半身を沈め、おしりを突き出す(ヨガでは猫のポーズとも呼ばれます)
首だけ内側に入らないようにすることと、手足の位置は変えないように注意しましょう。
このように上半身の背筋を柔らかくストレッチさせることで、背筋を効果的に正していくことが可能です。
さらに、常日ごろから鏡であなた自身の姿を確認する習慣をつけましょう。
家じゅうの鏡でも、出先のトイレやショーウィンドウでもOK。
常に体の引き上げとバレエの基本姿勢を意識するよう心がけましょう。
これをやるだけでも、体のコリや不調が改善され、確実に良い効果が期待できます。
上体の引き上げが上手にできているかどうかの判断の方法は?
基本姿勢の確認
まず、壁を背にします。
- 壁に肩甲骨が付いている
- 腰と壁の隙間に軽く手が入る状態
- おしりが壁に軽く触れる
肩甲骨は壁に触れますが、背中がべったりついてしまうのはNG。
またおしりが触れているのに肩甲骨が壁につかないときは、背筋が曲がっているためおしりが外側に出ている「でっちり」状態である可能性が高いです。
もし腰と壁に隙間がないなら、猫背になって腰で上半身を支えてしまっている上体です。
正しい上体の引き上げは、体の各部位にかかる負担を軽減することにも繋がります。
動いてみよう
今度は、動きながら上体の引き上げができているか、確認してみましょう。
フェイスタオルを使います。
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- フェイスタオルを折りたたんだものを頭に乗せる。
- 乗せたままパッセやグランバットマンなど、簡単なパを実践してみる。
他に乗せやすいものがあれば、代用してOKです。
頭が大きく沈んだりブレたりするのは上体の引き上げができていない証拠です。
バレエに「上体の引き上げ」は欠かせません。
上体の引き上げは、長年バレエを習っている人でも、ふとした瞬間に忘れてしまうことや、分からなくなってしまうこともあります。
プロのバレエダンサーでも、つまずきを感じることがあります。
基礎中の基礎でありながら、最大の課題なのかもしれません。
ですから、今すぐできるようにならなくても焦る必要はありません。
たくさんレッスンしたり、自主トレしたりしていくうちに徐々に感覚をつかんでいけばよいでしょう。
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