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「鏡の中の少女」あらすじと感想。【スティーブン・レベンクロンの小説】




■目次

著者について

画像引用:azquotes

1987年の6月に杵渕幸子と森川那智子の共訳によって、集英社文庫から刊行されている青春文学です。

著者のスティーブン・レベンクロンは、元々は小説家ではなく心理学者として活動していました。
数多くの患者と真摯に向き合っきた自らの臨床体験を元にしたこの小説は、発表されるや否や本国アメリカばかりではなく世界各国に翻訳されてベストセラーになっていきます。

その後はニューヨークで心理療法の診療所を開業して、拒食症に思い悩んでいる10代の少年少女たちに救いの手を差し伸べる取り組みをスタートしました。

本作品はそんな著者が「娘を育てるような気持ちで書いた」という、若い世代へのメッセージが込められています。

「鏡の中の少女」あらすじ

バレエを習っている少女たちフランチェスカ・ルイーズ・デートリッヒは、マンハッタンにあるバレエ教室に通っている15歳の女の子です。

ダンス教師のマダムに認められたいがために、フランチェスカは間食を控えて週5回のトレーニングを熱心にこなしていきます。

最初の1週間で1.8キロの減量に成功したフランチェスカは、マダムから全米各地から若いダンサーたちが集まってくる夏季特別講習のオーディションメンバーに推薦されました。

この狭き門を突破すれば秋のレギュラースクールに進学でき、更にはプロのバレリーナへの道のりも確実です。

次第にダイエットに熱中していく娘を心配した母親は、拒食症の少女たちを治療してきた心理学の先生の元へ連れていくのでした。


「鏡の中の少女」感想。テーマは摂食障害とフェミニズムの高まり。

摂食障害この本が日本に紹介された1980年代当時は、神経性拒食症や思春期やせ症といったキーワードが社会問題になり始めていました。

厚生省の公式データでは患者のうちの約6パーセントは死に至るという調査結果もあり、決して楽観視できません。

やがては拒食症や過食症と言った摂食障害の研究が進んでいき、世間一般の理解が深まっていく様子を垣間見ることができました。

本書のもうひとつのテーマとしては、フェミニズムの高まりもあります。
社会進出や高学歴化によって、有り余る自由や権利を与えられた女性たちの困惑ぶりも印象深かったです。

自分自身の女性としての性への嫌悪感が、過剰な体重コントロールへと繋がっていくことを感じました。

別の人間になろうとするフランチェスカ

別の人間への憧れ子供の頃にテレビに出てくるアイドルや漫画の中のスーパーヒーローと、入れ替わりたいと妄想したことはありませんか?

この小説のヒロインも自分の名前である「フランチェスカ」を捨て去り、「ケサ」という別の人間になろうとします。

フランチェスカが通っているレッスンスタジオは四方がガラスに囲まれているために、嫌でも自分の体型と周りの女の子たちとのギャップが丸見えです。
鏡の中に映し出された自身の姿に、嫌悪感を覚えてしまうシーンが鮮烈でした。

思春期に誰しもが1度は経験したであろう、変身願望を上手く捉えた描写には説得力があります。

フランチェスカの家庭環境や家族構成からも、自ずと彼女が抱えているコンプレックスが浮かび上がってくる

コンプレックスお兄さんのグレッグは既に家を出ていて、泣く子も黙るハーバード大学の学生さんです。
学業でAランクの成績を獲得したことや課外活動でも代表委員に選抜されたことを、逐一母親のグレースに手紙や電話で報告してきます。

学校でもダンススクールでも今一つ目立たない妹からすれば、当然ながら面白くありません。

せっかく入った一流大学を辞めてカリフォルニアの進歩的な団体に加入してしまった、お姉さんのスザンナがこれまた風変わりです。

優秀な兄と放浪癖の姉に挟まれてしまったフランチェスカの、何かと居心地の悪さが伝わってきました。

全編を通して味わい深いセリフの中でも特に良かったのは、「カウンセリング中は、まちがった答えとか、正しい答えとかいうものはないんだ。」です。

肉体的にも精神的にも痩せ衰えていく一方なフランチェスカを、時に厳しく時には温かく導いていくサンディ・シャーマン先生の言葉になります。

常識に捉われることのない先生との触れ合いを通して、自分だけの答えを探して成長していくヒロインの姿には胸を打たれました。

カウンセラーや学校の先生を志している方たちには、ぴったり合った本です。
今まさに青春時代を謳歌している学生の方や摂食障害に悩んでいる方にも、この作品を手に取ってほしいです。

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