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SWAN(スワン)-白鳥-漫画のあらすじと感想。ネタバレあり。




SWAN-白鳥-は、漫画家・有吉京子さんの代表作であり、少女漫画界の中でも屈指の名作と言える作品です。

1976年、集英社の「週刊マーガレット」で連載を開始し、短期間の中断を経ながら、1981年まで続きました。

その後、姉妹編や続編なども発売され、現在でも物語は続いています。

この漫画をきっかけにバレエを習い始めた、バレエ鑑賞が趣味になったという方も多いのではないでしょうか。

■目次

わたしとバレエ漫画の「SWAN」との出逢い

それは中学生のとき。
友達に借りて全巻読ませてもらったにもかかわらず、あまりにも気に入ってしまったため自分自身で購入してしまいました。

正直なところ、この漫画を初めて見たときは、あまり好きなタイプの絵柄ではありませんでした。
かわいいという印象ではなく、ちょっとクセのある絵だと感じました。

子供向けというよりは、大人向けの印象が強い絵柄なので、最初のページをめくったとき、まさか自分があんなにもハマるとは予想していませんでした。

この漫画を読んで何十年も経つのに、未だにわたしの心の中に生き生きとストーリーが蘇ります。

この物語は、北海道の旭川でバレエに打ち込む一人の少女が、運命に翻弄されながら、努力と強い意思によって、素晴らしいバレエダンサーとして認められていく、成長の記録です。

少女が大人の世界的なバレエダンサーになるまでの物語で、「週刊」という短いスパンにもかかわらず、長期的な目線で壮大なスケールのストーリーが展開していきます。

そして、その中で出会う素晴らしき指導者・仲間・ライバル・友人。
単なるバレエ漫画の枠を超えた、世界を股にかけた壮大な人間ドラマでもあります。


SWAN-白鳥-のあらすじを紹介します。

北海道の旭川で、バレエに夢中になる少女・聖真澄
物語の始まりは、東京。

主人公は北海道出身の15歳の少女・聖真澄(ひじり ますみ)

彼女はマイヤ・プリセツカヤの日本公演に感銘を受け、ひょんなことから、ソビエト人ダンサーであるアレクセイ・セルゲイエフや日本の若手有望株である草壁飛翔や京極小夜子と知り合いになります。

詳しく書くと、世界的に有名なダンサー、マヤ・プリセツカヤアレクセイ・セルゲイエフの白鳥の講演を観に行きますが、チケットは既に完売。
それでも何とかもぐりこみ、垣間見た2人の踊りに激しい感動をショックを覚えます。

何とか2人に一目会いたい、と楽屋裏で大勢のファンと出待ちする真澄。

2人の姿を見た瞬間、真澄は、周囲の目も気にせずに、2人の目の前で、ブラックスワンの一場面をはだしで踊り始めるのでした。

周囲の好奇の目と失笑に赤面する彼女に、大スター・マヤは、感動して、真澄に優しい言葉をかけるのでした。

思えば、ここからが、真澄のバレエにかける青春がスタートしたといっても過言ではありません。
この大衆の中には、永遠のライバルであり、恩人であり友人でもある、京極小夜子もいました。

この事件がきっかけで、真澄は、東京にでて、新設されたバレエ学校に推薦で入学することができたのでした。

国立のバレエ学校の生徒となり、草壁や小夜子らと共に厳しい練習に明け暮れるようになります。

ここから、本格的なスポ根ものともとれる、激しいバレエレッスンや、仲間たちとの競争が始まります。

魅了されるのは、登場人物の美しさと優雅さ。

一際輝く才能と美貌を持つ、京極小夜子

彼女は、家柄・容姿とも恵まれたエリート中のエリートですが、自身は決してそれにおごることなく、ストイックにバレエ道を追求しています。

とにかく、優雅で気高く描かれた小夜子さまは、まさに現代のプリンセスです。

小夜子は優美な容姿と高度なテクニックをもったバレリーナであり、真澄は努力を積みかさねるものの、小夜子に競り負け続けます。

プリンスは草壁飛翔

小夜子とは幼なじみで、彼も才能に恵まれ、非のうちどころのない王子様です。

彼に憧れる生徒もたくさんいますが、小夜子のパートナーとして暗黙の了解を得ている彼には、さすがに堂々とアプローチは出来ない、という存在です。

ちょっと破天荒キャラの、柳沢葵

彼は、飛翔の親友で、やはりすべてを兼ね備えたスーパースター的な存在。
あけっぴろげな性格で、女性にはもちろんモテモテです。

真澄・小夜子・飛翔・葵。この4人が軸になり、展開していくストーリー

主人公・真澄の劣等感は半端じゃなく、強烈なものでした。

いつも涙ぐんでうじうじしているシーンはとても共感できます。
しかし、さまざまな課題や困難を、持ち前の根性と明るさと、何よりバレエにかける情熱で克服していく様は、まさに爽快です。

そして、飛躍的に成長を遂げる真澄を見て、今までライバルというライバルがいなかった小夜子にとって、心中穏やかではないところもあるけれど、彼女の存在が今までにない新しい刺激となって、嬉しくもあるのでした。

そんな2人の関係を優しく見守る飛翔と葵の関係も、真澄を通して徐々に変化していきます。

まさに、このあたりが、自覚のない平凡であると思い込んでた少女の、秘められた才能が開花していくという、感動の世界へ誘ってくれるのです。

世界進出へと展開していく

それぞれが大きな壁につきあたります。

小夜子は、ソビエトで天才少女との対決と言われた講演で、アキレス腱断裂というバレエダンサーとして致命的なケガを負います。

その代役となる真澄は、プレッシャーに押しつぶされ、天才少女と呼ばれる、ラリサ、リリアナとの対決で、実力の違いを嫌というほど見せつけられて失意のどん底に陥り、一時的に、精神的な難聴に陥ります。

小夜子がアキレス腱断裂の怪我をしたことをきっかけに、真澄は頭角を現すようになり、更にロンドンやモスクワへの留学を経て、次第に日本を背負って立つダンサーへと成長していきます。

困難を乗り越えた2人は、それぞれ不死鳥の様によみがえり、それぞれあらたな世界へ一歩を踏み出すのでした。

その後真澄は、国立バレエ学校の公演でも主役を獲得します。

真澄が日本で開催される東京国際バレエコンクールに出場

世界中の有望な若手ダンサーが集まる中、真澄は役の解釈や演技の方向性に苦悩し、更に自国開催という重圧と動揺の中、周囲の人の手助けもあって、日本人最高位である銀賞を受賞します。

女性部門の金賞は、ソビエトの天才バレリーナであるリリアナ・マクシモーヴァ、男性部門はレオンハルト・フォン・クライストでした。

コンクール後、レオンハルトと共にアメリカのニューヨークシティバレエ団に留学した真澄は、そこで更にさまざまなダンサーたちと出会い、新たにモダンバレエの世界に触れることとなります。

クラシックな演目とモダンバレエとの差異に戸惑い、苦悩する真澄でしたが、アメリカ人ダンサーであるルシィに救われ、更に彼と恋に落ちます。

恋に溺れる真澄とレオンの間に亀裂が生まれ、真澄はバレエダンサーとしての道をいったん諦めかけます。

しかし突然起こった、ルシィの交通事故死をきっかけに、真澄はバレエの世界に戻ることを決意します。

こうして真澄は日本に戻り、さらに成長を遂げ、日本バレエ界屈指の世界的なダンサーという評価を得るようになります。

そしていよいよ、ソビエトの天才バレエダンサー・リリアナと競演することになります。

真澄は、本物の妖精のようなリリアナと競う恐怖と闘いながら、ひたすら努力を重ねるのですが、大絶賛されるリリアナの踊りとは裏腹に、真澄への観客の評価は低く、高まった評判をどん底に落とす結果となります。

全てを失った絶望感の中、逆に真澄の中に新たな舞踊の可能性を見たレオンは、彼女にパートナーを申し込みます。
真澄もまたレオンと舞踊の世界を極めたいと願うのでした。


主人公がひたむきに努力する姿に心震えます。

SWAN-白鳥-は約40年前の作品ということで、現代の少女漫画と比べると、絵柄や物語の展開は古く感じられるかもしれません。

しかし、バレエに対する感情は現代にも十分通じるものがあり、主人公のひたむきに努力する姿が、昔も今も読者の心を揺さぶっているのだと思います。

特に主人公の真澄は、特別な才能に恵まれているというわけではなく、最初はごく普通の少女なのです。

しかし、とにかくバレエが好きで、バレエを極めたいとひたむきに努力する才能に長(た)けています。

他の人があまり努力しないところを、長い時間かけて懸命に練習すると、そこを見込んで引き上げてくれる人物が現れるなど、幸運にも恵まれていて、プリマバレリーナに憧れる少女に夢を見させてくれる要素がたっぷり含まれているんです。

また真澄は、性格的にも傑出しているわけではありません。
時に落ち込んだり、うじうじと悩んだり、自虐的になることもしばしばで、思いつめてしまう少し暗い性格なのです。

物語上も、指導者や振付師や周囲のダンサーたちと意見が合わず衝突したり、相手の要求通りに動けずに苦悩するなど、全てが順風満帆というわけではありません。

しかし、本人のがむしゃらな努力と周囲の人の助力により、困難を乗り越えていくという「昭和のスポ根」的な展開と、少女の誰もが憧れる「バレエ」という優美で幻想的な要素とを、うまく融合させている点が秀逸なのです。

絵が美しいことは当たり前!バレエのことが自然と学べる

作中で取り上げられる、様々なバレエの古典作品のストーリーや、技術的に何が難しいのか、登場人物の表現方法など、漫画を読み進める中で自然に覚えてしまいました。

単純に、絵の美しさで手に取ったこの漫画にはまってしまったのは、自分の知らないバレエの世界を、とてもわかりやすく描いてくれている点もあります。

おかげで、バレエの古典作品に触れる機会に、予備知識があるのでとても興味深く観ることができます。

実在のダンサーや作品が数多く登場

特にバレエの観点でお話しますと、実在のバレエ団やバレエダンサー、振付家、作品の名前が多数登場するところも、他のバレエ漫画等とは一線を画す存在だと思います。

ソ連時代のボリショイバレエ団に始まり、真澄が留学する英国ロイヤルバレエ団やニューヨークシティバレエ団なども描かれます。

ダンス経験者であるならば誰もが頭の中で映像として描くことができるシーンが数多くあり、とてもリアリティのある作品です。

人物としては、あらすじのところでもご紹介したマイヤ・プリセツカヤ、森下洋子、ジョージ・バランシン、ジェームス・ロビンスなども登場し、それぞれほんのちょっとですが真澄と絡むシーンがあります。

演目に関しても、実在する演目が多数登場

眠れる森の美女やジゼル、ドン・キホーテロミオとジュリエットといった有名な演目はもちろんのこと、漫画の題名にもなっている白鳥(の湖)、瀕死の白鳥、そして黒鳥の踊りなどがたびたび登場し、それぞれ印象的なシーンを作り出しています。

中には「森の詩」のように全章に触れる巻もありますが、コンクールやオーディションのパートに関しては、参加者がそれぞれバラバラの演目を踊ることも多く、多数の作品が登場します。

各演目には簡単なストーリーや解釈等も付け加えられているため、バレエを全く知らない人も楽しめるよう工夫されており、さしずめ華やかなバレエカタログのようなパートもあるんですよ。

仲間たちとのやり取りや、ラリサ、リリアナ、そして、ニューヨークで出会う運命の恋人ルシアン、そしてパートナーとなるレオンとの出会い。

そして、もっとドラマチックなのが、師匠となるアレクセイ・セルゲイエフの父親と、真澄の亡くなった母親との因縁。

絶望の中に希望を見出しながら、ひたすらバレエの道を突き進んでいく真澄の姿に、本当に感動します。
絵の美しさとストーリーの素晴らしさに圧倒される、バレエ漫画の最高傑作だと思います。

美しい筋肉やポーズのラインにぐっと引き込まれる

バレエ漫画でよく挙げられる問題点として、ポーズの雑さや身体の描き方、ダンスシーンの表現の仕方などがありますが、「SWAN」においては全く気になりません。
美しい筋肉やポーズのラインが丁寧に描かれており、ぐっと引き込まれます。

作品を踊っているときや稽古をしているとき、ダンサーが感じている感情や空気感、緊張感などが細かく描写されており、迫力たっぷりに読むことができます。

それぞれのダンサーの技術や踊りに対するこだわりなども丁寧に描き分けられているのは本当に素晴らしいです。

また、普段ダンス公演を観るときは観客それぞれが想像で補っている舞台上での表現などが実際に紙面には描き込まれており、舞台芸術の臨場感や幻想的な雰囲気、華やかさを感じることができます。


わたしが最も感動したのは「感情の描き方」

表現に関わる全ての人々が経験するであろう、人生と表現活動の間での葛藤や悔しさ、苦しさ、何物にも代えがたい舞台での喜びなどがリアルに描かれています。

作者である有吉京子さんは実は元々はダンサーでこれらのことを経験しているのではないかと勘違いしそうになるほどです。

ただ通り一辺倒の「喜怒哀楽」ではなく、そこに至るまでの細やかな情景や動機などが丁寧に、そしてシンプルに描かれており、とても共感できます。

有吉京子の「弱さ」に対する考え方に励まされる

主人公である真澄の人物像はとても普通です。

真澄は少女漫画によく登場するなんでもできるスーパーヒロインでは決してありません。

ただただバレエが好きだから続けている、努力しているだけの女の子で、コンクールで負けることもあるし、ライバルに打ちのめされて自信喪失になることもあるし、大切な人を追いかけてバレエから離れることもあります。

そうした真澄の持つ弱さは、表現に関わる人だけでなく、わたしたちが日常生活で対峙して、戦っている弱さと同じです。

真澄が一つ一つ、一歩一歩そうした自分の弱さと向き合い、踏み越えていく姿にとても勇気付けられます。

バレエだけでなく、舞台芸術に関わる全ての人にとって、「弱い自分と向き合って重ねた地道な努力や挑戦が未来の自分を作る」というメッセージは大きな励ましとなります。

真澄に励まされて、辛さも一緒に体験して、「わたしも頑張ろう」と思える、そんな漫画です。

主人公の聖真澄だけでなく、周りに登場する人物もとてもユニークで素敵な人たちです。
登場人物全てを紹介することはできませんが、いわゆる悪人が出てこないのもこの作品の良いところだと思います。

全ての人にその人なりのバレエに対する情熱や筋の通ったやり方があり、たとえ真澄に共感できなくても誰かしらには共感出来るのではないでしょうか。

絵柄の変遷にも注目してみて。

また、これは余談ですが、絵柄の変遷が作者である有吉京子さんの歴史を物語っているのも面白い点であると言えます。

1976年から現在まで約40年に渡り描かれているというだけあって、作中の絵柄にはかなり変化があります。

それは作者の有吉さん自身の変化であると共に、日本の少女漫画界の変化でもあるのかもしれません。
そうした歴史も感じることができる、面白い作品です。

まとめ

最後になりますが、「SWAN」という漫画は、バレエの美しさや少女漫画としてのときめきだけでなく、芸術というものが持つ苦しさや喜びなどを感じることができる素晴らしいバレエ漫画だと思います。

実際のバレエを習っている少年少女の皆さんにはもちろん、大人になってからも楽しめる要素がたっぷり詰まった「SWAN-白鳥-」

上記本編はいったん完結していますが、その後も人気は衰えず、スピンオフ的作品や続編等も登場し、今なお新作が刊行されています。
この機会にぜひ一度「SWAN」の世界に触れてみてはいかがでしょうか?

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